83 / 91
番外編マリエルの末路④
しおりを挟む背中に痛みが走り、冷たい床は氷のようだった。
ずっと鞭打ちをされ続けた私は意識が飛びそうになるけど、気絶できないのは地獄だった。
「まったく、反省の色が見えませんわね」
「うっ…」
「お前は何処かまで愚かなのでしょう?五歳の子供でも理解できる頭を持っていないとは。どこまで馬鹿なのでしょう?」
あの後私は、この女に見つかり、そのまま拘束された。
私に無礼を働いたメイド達はなんの咎も受けずにおかしいじゃない。
死刑にされても生ぬるいぐらいなのに、私は地下牢で鞭打ちをされ、冷水を掛けられ続ける。
「先ほどから聖水をかけてますが邪気は払えませんわね…神父様にお願いして禊をさせるべきかしら?ダメだわ、水が汚れるかもしれません…男と交わり過ぎた体では水が汚れます」
「なっ…」
私を娼婦と一緒にするんじゃないわよ。
交わった男はちゃんと選んでいるし避妊だって抜かりはなかったんだから!
大体私の体は綺麗なんだから。
バシッ!
「きゃあ!」
「何です、その反抗的な目は。今後の仕事は炊事場の下働きです。いいですね?人前に出ることは許しませんわ」
「うっ…」
「三日間はそこで反省しなさい。水とパンだけは置いておきます」
そう言い残して地下牢から出て行った。
「冗談じゃないわ…こんなパン食べられるわけないじゃない」
固いし、ぱさぱさして。
ジャムもバターもないこんなパンなんて私の口に合わないわ。
「お母様は役に立たないし…どうにかしないと」
その時だった。
足音が聞こえた。
「マリエル、大丈夫?」
「誰?」
「私よ、下級メイドのシェリーよ。傷薬を持ってきたの…奥様には内緒よ。それからスープを少し」
随分と地味で冴えない女だった。
赤毛でそばかすがあって見るに堪えない醜い女だった。
「マリエル、貴女元はお嬢様だったの?」
「元じゃないわ今もよ」
「でもここに来たって事は、悪い事をしたか、敗戦国の奴隷かのどちらかよ。私は敗戦国の奴隷なのだけど…でも、ここは悪い所じゃないわ」
聞きもしないでぺらぺらしゃべる女にいら立つ。
別にアンタの身の上話なんて聞きたくないわ!それよりも早くこの手錠をどうにかしないさいよ。
「手錠を…」
「ごめんなさい。鍵は上級メイド様が持っているの。私のような下っ端メイドは鍵は渡されていないの」
役に立たないなわね!
いるだけで目障りでしかない女!
「来月は、パーティーもあるから大人しくていた方が良いわ。賄いもその日だけは豪勢なのよ」
「何かあるの?」
「ええ、他の領地の方が集まるの。後は商人も参加されて…奥様の妹君のラッド夫人よ。あの方は貧しい子供達や罪私達のような方にもお優しいの。慈善活動をされているのよ」
「慈善活動?」
「けれど旦那様が放蕩家だとか言って、女好きなんですって」
この時私は気づいた。
そのラッド夫人の旦那はいいカモだと。
きっと天は私に味方をしてくれていたのよ!
私が這い上がる為の手助けをしてくれたのね!
1
お気に入りに追加
2,916
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】“便利な女”と嘲笑われていた平凡令嬢、婚約解消したら幸せになりました ~後悔? しても遅いです~
Rohdea
恋愛
侯爵令嬢のフィオナは、取り立てて目立つところの無い平凡令嬢。
仲の良い家族を見て育った事もあり、昔から素敵な恋に憧れていた。
そんなフィオナの元にある日舞い込んだのは、公爵令息ダーヴィットとの縁談話。
平凡令嬢の自分に一目惚れしたなどと彼は言っているけれど──……
(ちょっと胡散臭い気がするけど、もしかしたら、これが素敵な恋になるかもしれない)
そう思って婚約することにしたフィオナ。
けれど、そんなある日、ダーヴィットが自分のことを『便利な女』だと仲間内で嘲笑っている所を聞いてしまう。
(違う! 私の素敵な恋の相手はこの人じゃない!)
色々と我慢出来なくなったフィオナは婚約解消を願い出ることにした。
しかし───……
✿“つまらない女”と棄てられた地味令嬢、拾われた先で大切にされています ~後悔? するならご勝手に~
──こちらの主人公の娘の話です。
✿“可愛げがない女”と蔑まれ続けた能面令嬢、逃げ出した先で幸せを見つけます ~今更、後悔ですか?~
──こちらの主人公の孫の話です。
※過去二作は読まなくても、特別問題はありませんが、一読して頂けると、
この家系の血筋による最初の男運の悪さがよく分かります。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
【完結】聖女を愛する婚約者に婚約破棄を突きつけられましたが、愛する人と幸せになります!
ユウ
恋愛
「君には失望した!聖女を虐げるとは!」
侯爵令嬢のオンディーヌは宮廷楽団に所属する歌姫だった。
しかしある日聖女を虐げたという瞬間が流れてしまい、断罪されてしまう。
全ては仕組まれた冤罪だった。
聖女を愛する婚約者や私を邪魔だと思う者達の。
幼い頃からの幼馴染も、友人も目の敵で睨みつけ私は公衆の面前で婚約破棄を突きつけられ家からも勘当されてしまったオンディーヌだったが…
「やっと自由になれたぞ!」
実に前向きなオンディーヌは転生者で何時か追い出された時の為に準備をしていたのだ。
貴族の生活に憔悴してので追放万々歳と思う最中、老婆の森に身を寄せることになるのだった。
一方王都では王女の逆鱗に触れ冤罪だった事が明らかになる。
すぐに連れ戻すように命を受けるも、既に王都にはおらず偽りの断罪をした者達はさらなる報いを受けることになるのだった。
甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。
そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。
しかしその婚約は、すぐに破談となる。
ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。
メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。
ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。
その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる