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番外編キャルドンの転落③

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寝たきり状態で虫の息だったはずなのに、メイド達の報告によるとこの二人は王都から来た医師が診察した事により回復したそうだ。


「先生…」

「もう大丈夫ですよ。お父さんとお母さんは直ぐに良くなります。現在王都で生産されている芳香性の一年生草本であります」

「赤いわ…これが?」

「はいこの紫蘇には滋養にもよく、解毒効果もあります」


誰だ、こんな医師は知らない。

何より俺は医師を手配したつもりはないのに!


「しかしよく見ると、お父さんは麻薬症状にが見られます。失礼ですが、麻薬などは」

「いいえ、父は麻薬など」

「タバコなどは?」

「嗜む程度で、最近はお茶を三食飲んでいましたわ」


まずい!
これ以上余計な詮索をされては困る。

「ははっ…麻薬だなんて大げさな。お二人は元から持病を患っていたのですよ」

「ですが、お二人の持病はいきなり悪化したんです。何か原因があるならお教えくださいませんか先生」

この馬鹿執事!
余計な事を言いやがって!

流離っている医師、しかも薬師程度では俺が仕組んだ麻薬には気づかないだろう。

なんせこの領地には一切存在しない毒キノコを使っているからな。

「先生、台所にこのようなおかしなキノコが」

「なっ!」

何でだ!
どうしてあれが見つかったんだ。

「真っ赤なキノコ?」

「なんて異質な色を…」

早くそのキノコを誤魔化さなくては。


「それは毒キノコの一種です」

「なんですって!」

「すぐに死ぬわけではありませんが、麻薬のような症状が出るまでに時間がかかりじわじわと体を蝕んだ後に発熱、下痢、足腰に痛みが来て最後は寝たきりになるのです」

「両親の症状と同じです!」

「では、誰かが毒を…」

「可能性は十分にあります。後はある物と合わせて飲むと効果は抜群なんですよ…例えば砂とかね?」


何だ…

この男は先ほどから俺を見ている。

まるで俺を犯人だと言いたげな表情をして。

「俺を犯人だと言いたいのか!あの塩は確かに砂が混じっているが…」

「砂ですって!」

「どういうことだ!」

「あっ…」

塩に砂を入れている事をうっかり口にしてしまった。


「やはりそうですか。最近この領地で出回る塩はザラザラしていると思ったが、こんな子供だましをしているとは。本当に屑だなキャルドン!」

「は?」

「お前の部屋からこんなものも出て来たぞ!」


バシッ!


俺の顔にぶつけられたのは大量の赤キノコに子爵に書かせた誓約書だった。


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