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55.腐った果実

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俺が守るべきはこの国と妻だ。
切り捨てるべき物は切り捨てなくてはならない。


腐った果実は切り落とさなければ、他の果実までもが腐ってしまう。


「ルイス…私は」

「君の誇りをこんなくだらない連中に侮辱されるなんて我慢できない」


だから俺は、冷酷にならなくてはならない。
守るために捨てなくてはならないのだ。


オスカーを見ると、既に解っていると言う目だった。




「我が国の女王の侮辱をした罪は重罪である。そのことを解っての発言とする」

「なっ…何?」

「王宮に押しかけ数々の無礼を働き、我が国の女王を侮辱したとあれば言い逃れはできん。国家反逆罪にも等しき行為として、この者を捕らえよ!」

「「なっ!」」

俺が声高らかに宣言した事に二人は驚いたが、当然の事だ。


騎士達は直ぐに二人を縛り付け押さえつけるもマリエルは俺を睨みつけた。


「どういうことよルイス!私にこんなことして許されると思っているの?」

「許されないのはどっちだ。王族を侮辱して許されないのはお前だ」

「お前ですって!出来損ないの分際で…折角私が復縁してやろうって言っているのに!何様よ」

何様なのはどっちだ。
大体、発言がおかしい事にまだわかっていないのか。


「ルイス…何故なの!どうして」

「ストラス夫人がそれを言いますか。散々私を蔑ろにして侮辱を続けた。それでも過去の事だから許そうとしました…何故か解りますか?前ストラス伯爵の為です。私は貴方達の事など愛していない。愛していたのは舅であるのは方とお爺様ですよ」


最後の敬意を持って接しようと思ったけど無駄だった。


「王宮に押しかけたまま放置すれば二人は牢屋に入れられ罪人として罰せられる。せめてそんなことにならないようにと思った私が馬鹿でした…情けなどかける価値もなかった」

「そんな…待って!」

「貴女の娘は私の妻を侮辱した。幼い頃から大切に見守って来た姫様を最低な言葉で侮辱したのです。既に私の敵です」


隣にいるリディ―の手を握りながら告げる。


「なんで…何でよ!」

「お前の魂胆は解っている。私の寵妃を触れ周り、過ちを繰り返す気だろうが…私は側妃を持つ事はない。逆の立場ならいざ知らず、私は王ではない」


王が側妃を持つならば納得するだろうけど、王の配偶者がそんな真似をしたら貴族派に付け入る隙を与えてしまうではないか。


俺から浮気をする気はまったくないけど。


「馬鹿じゃないの!一夫多妻なんて当たり前よ。第一結婚と恋愛は別なのよ」

「残念ながら同時進行だよ。俺達は恋愛結婚だ。幼い頃からずっとね…」

「嘘…じゃあ」


俺の初恋はリディ―だった。
許されない恋だと知りながら思いを抱いた。


「俺の心はずっとリディア王女の物だった。心だけはずっとこの方の物だ。例えこの先何があっても」

そう、未来の事は解らない。
もしかしたら俺が相応しくないと大臣に引き離されることがあっても。


俺の思いは変わることはない。


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