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42.マリエルの失態③

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土下座して考えを改めると思っていた。

なのに目の前の男は私を睨みつけながら一言言い放つ。


「私の恩人はルイス様であって貴女様ではありません」

「は?」

「私の母が病にかかった時、貴女は死にぞこないだと罵倒を浴びせました」


この男は何を言っているの?

「そんな私達に手を差し伸べてくださったのはルイス様とご母堂様です。私が忠義を誓うのはあの二人のみ…本体ならばルイス様が追放された時点でこの領地を去るべきでしたが…僅かな恩もあったと思い留まりました」


僅かな恩ですって?
恩人に向かって何を言っているの?

「ルイスの薬草は私の物よ!何を馬鹿な事を…」

「軽々しく呼び捨てになさらないでください。まだ妻気取りですか?なんと節度のない方だ」

「無礼者!お前なんて追放よ!」

この場で追放にして、二度と調合師として働けないように噂を流してやるわ。
領内だけでなく、他の領地でも働けないようにするぐらいわけないのだから!


「解りました。お世話になりました」

「待ちなさい!平民のお前が貴族に逆らって生きて行けると思っているの!」

「例え野垂れ死ぬ事になっても貴女の為に働く気はありません」

工房まで与えてやったのにこの男は!


「そう、後悔しても遅いわよ」

「お世話になりました」


こうして調合師のコフレは領地から消えた。


けれど、それだけではなく。

コフレは工房の職人のほとんどを連れて消えてしまった所為で、工房に残ったのは数名だけ。
しかも香水の技術は極端に劣る出来損ないばかりだった。


おかげで、香水の制作が滞り、新しく雇った職人は倍の賃金がかかってしまった。
しかも香水の出来は最悪で、販売した後に病気になる者が続出して返品をされてしまい代金を返上しろと言われる始末だったが取り合うことはなかった。


その結果、赤字を背負う事になった。
その赤字を補うために領民に重税を増やせばいいとキャルドンにアドバイスを貰った事で私達の生活に支障がなくなった。


流石はキャルドンと思いきや。
管理していた香水の原液が零れ大火事になってしまった。

その火事で領内の村が燃えてしまい、村の村長が救いを求めて来たが、何故私達がそんな真似をしなくてはならないのか。


自分達でなんとかすればいいのに、何でもかんでも領主に頼るなんてありえない。
これもすべてルイスが領民に甘い顔をしたせいだと思い、私は取り合わずにいたけど。

村人を連れて邸にまで押しかけて来たのでキャルドンが追い返してくれた。

流石は頼りになると思ったら、その翌日。
暴動が起きるようになり、邸に押し寄せてきてしまった。

幸いにも抑え込めたけど、タイミング悪く大雨が降り作物は荒れてしまい。
ストラス領地では不作の年となり、私達の生活も影響を受けるようになりだし邸内では常にピリピリした空気が流れ、これまでの生活ができなくなった。


食事も質が落ちて、贅沢ができなくり。
無能な執事長の所為で、使用人は大幅に解雇せざる得ない状況になり。


そして悪い事は続くもので、領民達は悪い事をすべて私達の所為だと狂言を言い出した。


そして、数々の不幸が重なった私達は邸を手放し別邸へ逃げることにした。
日に日に領民が襲って来て、使用人もすべて解雇してしまった今では自分達の身を守ることもできないと思ったからだ。

別邸にはお祖父様がいるから匿ってくれるはず。
だって、私は孫なのよ?

そう思い質素な馬車で別邸まで向かったのだが、そこには何もなかった。

後から聞かされたけど、お祖父様は邸を壊して領地を離れたと聞かされたのだった。

頼みの綱のお祖父様もおらず、私達は避暑地に使っていた小さな邸に向かうことになったが、そこでの生活は最悪な物でしかなかった。



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