51 / 91
42.マリエルの失態③
しおりを挟む土下座して考えを改めると思っていた。
なのに目の前の男は私を睨みつけながら一言言い放つ。
「私の恩人はルイス様であって貴女様ではありません」
「は?」
「私の母が病にかかった時、貴女は死にぞこないだと罵倒を浴びせました」
この男は何を言っているの?
「そんな私達に手を差し伸べてくださったのはルイス様とご母堂様です。私が忠義を誓うのはあの二人のみ…本体ならばルイス様が追放された時点でこの領地を去るべきでしたが…僅かな恩もあったと思い留まりました」
僅かな恩ですって?
恩人に向かって何を言っているの?
「ルイスの薬草は私の物よ!何を馬鹿な事を…」
「軽々しく呼び捨てになさらないでください。まだ妻気取りですか?なんと節度のない方だ」
「無礼者!お前なんて追放よ!」
この場で追放にして、二度と調合師として働けないように噂を流してやるわ。
領内だけでなく、他の領地でも働けないようにするぐらいわけないのだから!
「解りました。お世話になりました」
「待ちなさい!平民のお前が貴族に逆らって生きて行けると思っているの!」
「例え野垂れ死ぬ事になっても貴女の為に働く気はありません」
工房まで与えてやったのにこの男は!
「そう、後悔しても遅いわよ」
「お世話になりました」
こうして調合師のコフレは領地から消えた。
けれど、それだけではなく。
コフレは工房の職人のほとんどを連れて消えてしまった所為で、工房に残ったのは数名だけ。
しかも香水の技術は極端に劣る出来損ないばかりだった。
おかげで、香水の制作が滞り、新しく雇った職人は倍の賃金がかかってしまった。
しかも香水の出来は最悪で、販売した後に病気になる者が続出して返品をされてしまい代金を返上しろと言われる始末だったが取り合うことはなかった。
その結果、赤字を背負う事になった。
その赤字を補うために領民に重税を増やせばいいとキャルドンにアドバイスを貰った事で私達の生活に支障がなくなった。
流石はキャルドンと思いきや。
管理していた香水の原液が零れ大火事になってしまった。
その火事で領内の村が燃えてしまい、村の村長が救いを求めて来たが、何故私達がそんな真似をしなくてはならないのか。
自分達でなんとかすればいいのに、何でもかんでも領主に頼るなんてありえない。
これもすべてルイスが領民に甘い顔をしたせいだと思い、私は取り合わずにいたけど。
村人を連れて邸にまで押しかけて来たのでキャルドンが追い返してくれた。
流石は頼りになると思ったら、その翌日。
暴動が起きるようになり、邸に押し寄せてきてしまった。
幸いにも抑え込めたけど、タイミング悪く大雨が降り作物は荒れてしまい。
ストラス領地では不作の年となり、私達の生活も影響を受けるようになりだし邸内では常にピリピリした空気が流れ、これまでの生活ができなくなった。
食事も質が落ちて、贅沢ができなくり。
無能な執事長の所為で、使用人は大幅に解雇せざる得ない状況になり。
そして悪い事は続くもので、領民達は悪い事をすべて私達の所為だと狂言を言い出した。
そして、数々の不幸が重なった私達は邸を手放し別邸へ逃げることにした。
日に日に領民が襲って来て、使用人もすべて解雇してしまった今では自分達の身を守ることもできないと思ったからだ。
別邸にはお祖父様がいるから匿ってくれるはず。
だって、私は孫なのよ?
そう思い質素な馬車で別邸まで向かったのだが、そこには何もなかった。
後から聞かされたけど、お祖父様は邸を壊して領地を離れたと聞かされたのだった。
頼みの綱のお祖父様もおらず、私達は避暑地に使っていた小さな邸に向かうことになったが、そこでの生活は最悪な物でしかなかった。
3
お気に入りに追加
2,910
あなたにおすすめの小説
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ブチギレ令嬢の復讐婚~親友と浮気され婚約破棄、その上結婚式場として予定していた場所まで提供してほしいと言われ💔
青の雀
恋愛
事実は小説より奇なり
まるで、私の作品のような話が、本当にありました
この話を書かずして、誰が書くの?という内容なので
3年ほど前に書いたような気がするけど、ちょっと編集で分からなくなってしまって
どっちにしても婚約破棄から玉の輿のスピンオフで書きます
余りにもリアルな話なので、異世界に舞台を置き換えて、ファンタジー仕立てで書くことにします
ほぼタイトル通りの内容です
9/18 遅ればせながら、誤字チェックしました
第1章 聖女領
第2章 聖女島
第3章 聖女国
第4章 平民の子を宿した聖女
番外編
番外編は、しおりの数を考慮して、スピンオフを書く予定
婚約破棄から聖女様、短編集
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
死を願われた薄幸ハリボテ令嬢は逆行して溺愛される
葵 遥菜
恋愛
「死んでくれればいいのに」
十七歳になる年。リリアーヌ・ジェセニアは大好きだった婚約者クラウス・ベリサリオ公爵令息にそう言われて見捨てられた。そうしてたぶん一度目の人生を終えた。
だから、二度目のチャンスを与えられたと気づいた時、リリアーヌが真っ先に考えたのはクラウスのことだった。
今度こそ必ず、彼のことは好きにならない。
そして必ず病気に打ち勝つ方法を見つけ、愛し愛される存在を見つけて幸せに寿命をまっとうするのだ。二度と『死んでくれればいいのに』なんて言われない人生を歩むために。
突如として始まったやり直しの人生は、何もかもが順調だった。しかし、予定よりも早く死に向かう兆候が現れ始めてーー。
リリアーヌは死の運命から逃れることができるのか? そして愛し愛される人と結ばれることはできるのか?
そもそも、一体なぜ彼女は時を遡り、人生をやり直すことができたのだろうかーー?
わけあって薄幸のハリボテ令嬢となったリリアーヌが、逆行して幸せになるまでの物語です。
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる