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閑話4.多忙

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盛大に行われた生誕祭が終わってすぐにリディアの戴冠式の準備が進められる中、多くの貴族が祝いの品々を送り、王宮内では人の出入りが半端なかった。

それぞれに対応する侍従に侍女達は大忙しだった。
当事者であるリディアに関しては休む暇もなく、しばらくの間ルイスと過ごす時間もなかった。


その反対にサジータ達は比較的時間に余裕があるのか、ルイスを連れて王都を離れモリアーヌ領地にてバカンスを楽しんでいるとの手紙が届いた。


「私がこんなに忙しいのに…ズルいわ叔母様!」

「そう怒るな。バカンスとは表向きじゃ。モリアーヌ領地で少々問題が起きた故…ルイスを同行させているのじゃ」

「それこそ建前ではありませんの?」

手紙には長ったらしくルイスと暇を過ごしている内容が書かれている。


「そうは言うが、そなたの戴冠式のギリギリまでは身を潜める方が安全じゃ」

「私が守ればいいではありませんか!これでも剣帝と呼ばれたのです」

「馬鹿を言うな…戴冠式前に王宮を血で染める気か」


ああ言えば、こう言う親子に周りは呆れるも、二人共書類から手を離すことはなく。
仕事はしっかりしているので、文句が言えない状況だった。


「大体、公爵家に養子に迎えられたからってズルくありませんか!私だってルイスといちゃつきたかったのに」

「愚か者、王になってすぐはそんな暇あるか。私とて新婚旅行は王宮内の離宮で一泊だけじゃ!」

「嫌ですわ!何です?そんな地味でロマンの欠片もない新婚旅行!絶対認めませんわ」

「ハッ、腹黒の大臣の策略を交わすなど無理じゃ。戴冠式が終われば同盟国の勅使が挨拶に来るだろうが!その後も何かと忙しいのじゃ…優秀なシュヴァンとて缶詰状態だったのだからな!」


若かりし頃、武道に優れていたカレンディスだが、事務作業は苦手だった。
無き夫シュヴァンが優秀だったおかげで事なきを得たが、戴冠式を終えてすぐは地獄のような忙しさで初夜も迎えることもままならず。

その後も数年間、寝所を共にできたのは数えるだけだった。


仕事を回してきた大臣の中には、二人の間に子ができないように仕組んだ者も少なくなかったのだ。


「なんて事なの…これでは私の新婚生活はないわ」

「そう思うなら、この山のような書類を片付けよ」

二人は嘆きながらも侍従達がどんどん増やしていく書類を片付けるしかなかった。



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