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17.王女の思い

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一曲だけダンスを踊れれば良かったはず。
諦められると思ったのに私の心は諦めていなかった。


久しぶりに会ったルイスは素敵になっていた。
美しい礼服に身を包み、私が一番好んでいた装いをしてくれた。


胸には私との思い出の花が飾られていた。
偶然かもしれないけど、それでも嬉しかった。


胸の花を奪いたい。
ルイスの心が欲しくて仕方ない欲求を押さえながらも今だけは私だけのルイス。

あの女の物じゃない。

そう思うと、私の中の汚い感情が溢れそうになって、言ってはいけないことを言ってしまった。

幸いにも聞こえている者はいない。
だって、折角の時間を邪魔されたくないから結界魔法で私達の会話は聞こえないようにした。


そうでなければルイスの立場が危ぶまれる。


なのに、困った表情をするルイスは昔と変わらない優し気な笑みを向けてくれていた。


だから錯覚しそうになる。
ルイスも私を思ってくれているのではないか。

そんなのありえない。

だって、領地に帰ってからは王都にいても王宮には一度も来てくれなかった。


私に会おうとはしてくれなかった。
婚約者を大切にしていたからなのだろうと私も思った。


けれど、社交シーズンでもルイスは婚約者と一緒に顔を出すことはなかった。

逆にあの女は普通に顔を出していると聞いた。

聞けば領地代行をルイスに任せ、あの女は遊び歩いている噂を耳にした。

当初は憤りを感じたけど所詮は噂。
何より婿養子に望まれたルイスが領地代行を務めるのは当然のこと。

忙し過ぎて王都に来るのも困難だったのだと思ったわ。

それに、見栄を張るだけのパーティーは苦手なのだと言うことも知っていた。


だから何も言わなかったし、他人の家庭に口を挟むほど愚かじゃなかった。


けれど、私の心は黒く染まって行く日々が続いた。
あの女は美しく着飾り、遊び歩いている噂を聞くたびにルイスは仕事をして寝る時間も惜しんでいるのに、大丈夫なのか。


ちゃんと食べて寝ているのか。

心配で仕方なかった私は、遠回しに聞いてみた。

そしたらあの女はルイスに関心がなかったような口ぶりだった。


どうしてこんな女が!


理性の鎖で抑え込みながらも、憎いと感じた。


私じゃない、この女の手を繋ぐの?

他の女を抱きしめるの?

キスをするの?


そんなの嫌だった。
物語のように、彼の手を握り駆け落ちをしようなんて考えはなかった。


次期女王として無責任な真似はできない。


でも、ダンスを踊り。
一時だけルイスを独り占めをしていた私は、決心が揺れた。


そしてあの言葉が頭に過った。


お父様が無くなる前に私におっしゃった言葉だ。


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