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15.生誕祭

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生誕祭当日はパレードも行われ、派手な演出が行われている。
王宮内の庭園の解放され、平民も入る事が許されるのだが、警備も厳重に行われていた。


王宮内の広場には大勢の貴族が参加し、本日のパーティーには女王陛下とリディア王女が姿を見せる。

挨拶はリディア王女が行い、既に一歩下がりながらもサポートに回る女王陛下は装いは質素だが、風格は衰えがなかった。


「今宵は良く集まってくださいました。これよりは無礼講です。皆、歌い、踊り存分に楽しみ、生誕祭を無事迎えられたことを感謝するように」


リディア王女が挨拶のスピーチを行い拍手する。
立ち振る舞いは既に女王陛下のように美しいとも思った。


「ご立派になられて」

「そうだといんだがな」

オスカーが隣でシャンパンを飲んでいたが、何故ここに?


「おい、何でこんな後ろにいるんだ?お前は王族の近くだろう」

「まぁ、気にするな」

高位貴族は王族の近くに待機できることが許されている。
貴族の中でも侯爵の地位は高位貴族に入るのだから、こんな隅っこにいる必要はない。


それ以前に悪目立ちをしている気がする。


やっぱりあしながおじさんが容姿してくれた礼服は似合わなかったかな?
義兄上も一族の代表としていくのだからと上等なマントを用意してくれたけど、俺には不釣り合いだったかもしれない。


「おい、道を開けろ」

「王女殿下だ!」

そんな時だった。
貴族達がざわめく中、視線の先はゆっくりと美しい所作で歩くリディア王女。


「今日の良き日を祝って私と踊ってくださいませんか」


手を差し出されて俺は一瞬驚きはしたが、すぐに挨拶のキスを送った。


断る理由はない。
ファーストダンスだけならば無礼になることはない。

何より俺は婚約破棄さをされた身なのだから。


「光栄にございます麗しき我が姫」


俺は独身に戻った以上は誰かに避難されるいわれはない、嫉妬の感情を受けたとしても。

生誕祭が終われば俺は貴族ではなくなるのだから。


そう思いながらリディア王女の手を取りながらダンスを踊り始めた。


「ルイス、来てくださったありがとう」

「殿下…」


「私は、貴方が来てくださるのを待っていたのよ」

ダンスを踊りながら小声で話すリディア王女は嬉しそうに微笑みながらも耳打ちする。


「ファーストダンスだけは貴方と踊るって決めてましたの…貴方と」

その言葉に俺は動揺しそうになる。

「殿下、なりません」

ダンスを踊りながら周りに聞かれていないか冷や冷やする。
こんな迂闊な事をするような人ではなかったはずなのにどうしたと言うんだ。


「今日の貴方の装いを見ると、王女としての私ではなく、女としての私が欲を優先してしまいそうになるわ」

「何を…」

「戯言と思ってくださって結構。私は女王となる者…自由に恋をすることも、誰かを愛する事も許されません。貴方に抱かれることすら…」

「殿下、お戯れが過ぎます」

昔からお転婆が過ぎる人だったが、大胆過ぎる発言だった。


「解っていますわ。叶わぬ夢です。ですから許してください…叶わない夢を抱く愚かな私を…女王になるまではまだ子供です。ですから許して」

華麗なターンを決めながらも顔を近づける。
周りには解らないようにしているあたりダンススキルの高さが伺えた。


「私は貴方をずっと愛してました」

「殿下…」

「知ってらしたでしょう?私の気持ち…けれど、私は恋よりも国を選ぶわ」


切なそうに見つめられ、胸が痛む。
知らないわけではなかった。

幼い頃から好意を純粋にぶつけられる方だった。

無理強いはしなかったけど。
俺の立場では難しいし、俺達は幼馴染として親しくあっても子供だから許されたんだ。


だから――。


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