18 / 91
15.生誕祭
しおりを挟む生誕祭当日はパレードも行われ、派手な演出が行われている。
王宮内の庭園の解放され、平民も入る事が許されるのだが、警備も厳重に行われていた。
王宮内の広場には大勢の貴族が参加し、本日のパーティーには女王陛下とリディア王女が姿を見せる。
挨拶はリディア王女が行い、既に一歩下がりながらもサポートに回る女王陛下は装いは質素だが、風格は衰えがなかった。
「今宵は良く集まってくださいました。これよりは無礼講です。皆、歌い、踊り存分に楽しみ、生誕祭を無事迎えられたことを感謝するように」
リディア王女が挨拶のスピーチを行い拍手する。
立ち振る舞いは既に女王陛下のように美しいとも思った。
「ご立派になられて」
「そうだといんだがな」
オスカーが隣でシャンパンを飲んでいたが、何故ここに?
「おい、何でこんな後ろにいるんだ?お前は王族の近くだろう」
「まぁ、気にするな」
高位貴族は王族の近くに待機できることが許されている。
貴族の中でも侯爵の地位は高位貴族に入るのだから、こんな隅っこにいる必要はない。
それ以前に悪目立ちをしている気がする。
やっぱりあしながおじさんが容姿してくれた礼服は似合わなかったかな?
義兄上も一族の代表としていくのだからと上等なマントを用意してくれたけど、俺には不釣り合いだったかもしれない。
「おい、道を開けろ」
「王女殿下だ!」
そんな時だった。
貴族達がざわめく中、視線の先はゆっくりと美しい所作で歩くリディア王女。
「今日の良き日を祝って私と踊ってくださいませんか」
手を差し出されて俺は一瞬驚きはしたが、すぐに挨拶のキスを送った。
断る理由はない。
ファーストダンスだけならば無礼になることはない。
何より俺は婚約破棄さをされた身なのだから。
「光栄にございます麗しき我が姫」
俺は独身に戻った以上は誰かに避難されるいわれはない、嫉妬の感情を受けたとしても。
生誕祭が終われば俺は貴族ではなくなるのだから。
そう思いながらリディア王女の手を取りながらダンスを踊り始めた。
「ルイス、来てくださったありがとう」
「殿下…」
「私は、貴方が来てくださるのを待っていたのよ」
ダンスを踊りながら小声で話すリディア王女は嬉しそうに微笑みながらも耳打ちする。
「ファーストダンスだけは貴方と踊るって決めてましたの…貴方と」
その言葉に俺は動揺しそうになる。
「殿下、なりません」
ダンスを踊りながら周りに聞かれていないか冷や冷やする。
こんな迂闊な事をするような人ではなかったはずなのにどうしたと言うんだ。
「今日の貴方の装いを見ると、王女としての私ではなく、女としての私が欲を優先してしまいそうになるわ」
「何を…」
「戯言と思ってくださって結構。私は女王となる者…自由に恋をすることも、誰かを愛する事も許されません。貴方に抱かれることすら…」
「殿下、お戯れが過ぎます」
昔からお転婆が過ぎる人だったが、大胆過ぎる発言だった。
「解っていますわ。叶わぬ夢です。ですから許してください…叶わない夢を抱く愚かな私を…女王になるまではまだ子供です。ですから許して」
華麗なターンを決めながらも顔を近づける。
周りには解らないようにしているあたりダンススキルの高さが伺えた。
「私は貴方をずっと愛してました」
「殿下…」
「知ってらしたでしょう?私の気持ち…けれど、私は恋よりも国を選ぶわ」
切なそうに見つめられ、胸が痛む。
知らないわけではなかった。
幼い頃から好意を純粋にぶつけられる方だった。
無理強いはしなかったけど。
俺の立場では難しいし、俺達は幼馴染として親しくあっても子供だから許されたんだ。
だから――。
3
お気に入りに追加
2,910
あなたにおすすめの小説
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ブチギレ令嬢の復讐婚~親友と浮気され婚約破棄、その上結婚式場として予定していた場所まで提供してほしいと言われ💔
青の雀
恋愛
事実は小説より奇なり
まるで、私の作品のような話が、本当にありました
この話を書かずして、誰が書くの?という内容なので
3年ほど前に書いたような気がするけど、ちょっと編集で分からなくなってしまって
どっちにしても婚約破棄から玉の輿のスピンオフで書きます
余りにもリアルな話なので、異世界に舞台を置き換えて、ファンタジー仕立てで書くことにします
ほぼタイトル通りの内容です
9/18 遅ればせながら、誤字チェックしました
第1章 聖女領
第2章 聖女島
第3章 聖女国
第4章 平民の子を宿した聖女
番外編
番外編は、しおりの数を考慮して、スピンオフを書く予定
婚約破棄から聖女様、短編集
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる