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14.願いは一つ
しおりを挟む女王陛下の許し無しに婚約破棄をすることは通常ありえない事だった。
余程の理由がない限りは。
例えば、相手が王族であった場合は考慮される。
ただし、公の場で婚約破棄をするなんて常識のある貴族ならまずありえない。
ルイスがストラス家のお金を無断で使った証拠なんてありもしないでっち上げだし、薬草の維持費だって必要なお金だった。
ただ、強欲な親子はルイスにもっと収入を増やす様に命じたのだろう。
浪費癖は変わらずで、薬草の管理もルイスにさせて経費を浮かせていたし、ルイスの稼いでいたお金を勝手に使っていた事も後から知った。
調べさせると、ここ数日のお金周りがおかしい事も解ったし。
ルイスの部屋で見つけた借用書は、二人がルイスの名義でお金を借りていた事が解った。
何処までルイスを侮辱すれば気が済むのか。
お義父様は表向きは厳しい事を言って家から出したのは、ルイスに自由に生きて欲しいからなのではないかと思った。
邸内ではお義父様の命令は絶対であるけど、誰よりもルイスを溺愛していたお義父様。
幼少の頃は体の弱い私に変わってお義母様がルイスを育ててくださり、お義父様も時に厳しく、愛情を注ぎながら育ててくださったことを知っている。
魔力が低く、精霊の加護を持たなかったけど。
そんなことは重要ではないと言っておられたのだから。
魔力など無くても、剣術が優れてなくとも、一番必要な物をルイスは持っていると言っておられた。
きっとお義父様はルイスを自由にしてあげたかったのかもしれない。
あの時は酷いとも思ったけど、領地から追放という形にすればルイスに同情の声が上がるだろうし。
王都ならばルイスは自由になれるかもしれない。
多少の傷はあるかもしれないけど、グライアイの婆様達がある程度は守ってくださるはず。
悪いようにはしないし、王都でいい人を見つけて好きに生きて欲しい。
私達の願いはただ一つ。
あの子に幸せになって欲しいのだから。
「話は終わった。私達は帰らせてもらおう…生誕祭が終われば私達は完全に他人だ。過去の縁にしがみ付いて金を無心に来るようなは愚かな事をしないことを祈るよ」
「待ちなさい!話は…」
「ハッ、爵位も持ってない小娘が伯爵の私に意見するとは…まだ立場が解ってないのか」
「何を偉そうに!」
馬鹿じゃないのかしら?
いいえ、本当に馬鹿なのね?
夫が理性的でなかったら領地を攻め込まれていてもおかしくないわ。
「この時を持って我らは敵同士だ。ルイスの婚約者だからこそこれまで支援をして来たが…我らの後ろ盾を無くした後にどうなるか思い知るがいい。溝鼠が!」
「なっ!」
「これ以上この場にいれば、お前の体に悪い…帰るぞ」
「はい、貴方」
背後で癇癪を起しながら騒いでいる二人を無視しながらも、これから私達は動かなくてはならない。
ただし、ストラス家に手は出さないわ。
私達が手を出すまでもなく、このまま行けば傾くでしょうから。
生誕祭が終わり、戴冠式中に貴族達が事を起こす可能性もある。
貴族として、領地を持つ身として成すべきことをしなくてはならないのだから。
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