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⑨
しおりを挟む牢馬車で何時間もかけた後に夜は暗くなり、微かに塩の香りがした。
既に真夜中で、何処か解らなかった。
ようやく牢馬車から出されたと思ったら今度は船に乗せられた。
輸送用の船で、隣には。
「もぉぉぉ!」
「もー!もごもご!」
牛や馬がいた。
しかもかなり不衛生な管理をされている。
異臭が酷くて足場はわらだらけ。
何でこんな場所に!
「おい、もういいんじゃないか」
「そうだな」
兵士たちが私の布を乱暴に取った後に拘束を解いたけど、動くことができなかった。
移動中は恐怖と不安と疲労感もあって気づかなかったけど足首に違和感があったの。
鎖の音が聞こえ、私は足首に足枷がつけられていることに気づいた。
よく見ると首にも違和感が。
「首輪と足枷があれば自由に動けないだろ?」
「ああ、念のために牛と繋いでおくか」
私につけられている首輪と足枷は、家畜たちと繋がっている。
「何よこれ…私は人間よ!人権問題じゃない!」
「人権ね?お前は保護監督制度から外れてんだ。しかも修道女にも危害を加えた以上は重犯罪レベルだ!」
「通常重犯罪者は親を殺したか、子供を複数殺した者に与えられるんだが…」
何よそれ。
私は誰も殺していないし誰も傷つけていないじゃない。
修道女達にだって悪いことはしていないわ!
第一、向こうが色々勝手にしたんじゃない。
私は何も悪くない!
そうよ絶対に悪くないんだから!
「こいつ、本当に救いようのない馬鹿だな」
「ああ、無理だろ。殺してしまえばいいのにな」
私を見下し兵士達はその場に放置し去っていく。
逃げようにも足枷の所為で身動きが取れない。
「もぉぉぉ!」
「ひっ…」
私は動けないけど、家畜たちはそういうわけではない。
「やめっ…」
「もぉぉぉ!」
「ぎゃん!」
勢いよく頭突きをされ、私はその場に倒れそうになるが、巨大な牛は飽き足らず私にのしかかろうとする。
転んでしまった私は急いで転がりなんとかよけることができたけど、満足に動かない体では次にのしかかられたら死んでしまう。
「このままこんな汚い家畜に殺されるなんて冗談じゃないわ」
こんなところで死ぬものかと思った私だったけど、こんなのは序の口だった。
翌日船が到着した後に私は家畜と同じ牢に入れられ移動になった。
到着した場所は古いお城。
歴史にでもにっているかのような古びた城で周りにの庭には家畜が放し飼いされていた。
「さぁお前はこれから闘技場に行くんだ」
「え?」
私にとってこれが地獄の始まりだった。
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