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⑨
しおりを挟む恐れていたことが現実になった。
「叔父様!リサ先生が軟禁されるってどういうことですの!」
「同居だ…お前は、また変な本を引っ張り出したのか!」
「教養を高めるためです」
私の趣味の事はこの際どうでもいいのよ。
問題はあの屑一家がリサ先生を家庭に閉じ込めようと強硬手段に出た。
同居の件だって勝手に決めたのよ。
最初こそは話し合いにしていたのだろうけど、強引に押すはずだわ。
「だが、シンパシー家で使用人を雇っているだろう…ならば」
「甘いわ。チョコレートケーキに砂糖をかけるよりもずーっと甘いのよ!」
仕事面では優秀だと言われているのに叔父様は何でこんなに鈍いのよ。
「あいつらは金の亡者よ!夫も屑よ…自分のスーツを新調しても妻には新しい靴も買わせない。お給金だって全部奪われているに違いないわ…同居なんてしたら今まで以上にこき使われるにきまっているわ!」
だって結婚してからリサ先生は疲れていると顔が語っている。
それまでは手は白くてすべすべだったのに。
リサ先生は大丈夫としか言わない。
このままじゃリサ先生は病気になってしまうと思った矢先、今度は義姉の子供の面倒を押し付けられ、子供ができるまでの練習をさせてやっている等と言われているそうだ。
「もう我慢できない!」
「どうなさるのですかお嬢様」
「強硬手段よ」
私が何を言っても駄目だというのは解っている。
このご時世、女性が離縁するのはとっても恥ずかしいことだった。
特に商家の娘ならば世間体がある。
万一離縁しても、子供ができないリサ先生を世間は悪く言うだろうし、あの馬鹿一家はリサ先生を悪者に仕立てあげるだろう。
まぁあの手この手を使って離縁を阻止するか、離縁しても無理やり連れ戻すだろう。
なんとなしくては…
そんな時だった。
「叔父様、お話とは何ですの」
「先日、弁護士に調査を頼んだ…リサ先生の離縁に関してだ」
「叔父様!」
まさか叔父様が既に動いていたとは思わなかった。
「私も同居が始まる前から不安で調べていた…」
叔父様が動くぐらいだもの。
相当酷い状況だったと思ったけど問題はリサ先生だわ。
「リサ先生が離縁したいというならばすぐにでもできる。だが、このケースは簡単じゃない」
「本人が虐げられている自覚がないからね」
「ああ…世の妻は家庭に入り夫や家族に尽くすのは当たり前とされている。対象辛い環境でもな」
おかしいわ。
妻だから召使のように働からされ、新しい服も与えられない。
「こんなの…人間のすることじゃない」
「だからこそ先生に認識をしてもらわなくてはならない。離縁しても同じことに繰り返しになる」
だから私は、リサ先生を救うために強引な真似をした。
「叔父様、リサ先生の贈り物に防犯のあれを設置してください」
「しかしそれは…」
「もう手段を選んでいられないわ。それからリサ先生を外に連れ出すんです!」
できるだけ外の空気を吸ってもらって、リサ先生に今の自分を見て欲しい。
どれだけやつれてしまったか、客観的に見てもらえる場所に連れていく事にした。
そこである女性と出会い、リサ先生は自分の置かれている立場を理解してくれた。
だけどあの屑一家は何所までも屑だった。
あろうことにリサ先生に手をあげたのだ。
堂々と自分達のしていることを正当化してしつけだなんて言ってリサ先生を殺そうとしたのだから叔父様は完全に切れてしまった。
まぁそのその後は行動が早かった。
でもその所為で私も容赦しないで済んだのだ。
最高の復讐のために。
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