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お母様は独身時代探偵をしていた。
貴族令嬢でありながらも驚くほどの行動的だった。


気になったことはとことん調べる。
お父様との婚約が決まってからも徹底的に調べたと聞く。


だから私もこっそり調べるわ。


今日は家庭教師の日ではないけど、頻繁訪問することが多い。


「旦那様、こちら会計報告です」

「悪いね。休みの日に」

「いいえ、お世話になっているのですからこの程度は」


こっそり本棚に隠れてお母様の遺品の一つ。
探偵グッズを片手に二人の会話が良く聞こえるようにスピーカーを設置する。


「あの子が迷惑をかけているようで」


私の事を話しているのかしら?


「少し甘やかせすぎたかもしれない…が、私も子供がいないので接し方が解らなくてね」

「旦那様は本当にお嬢様が大好きなのですね。お嫁に行かれたら大変ですね」


「随分先だ。行ったとしても遠くに行くことはない」

「まぁ」


何の話をしているの?
私の話ではなくリサ先生の話をして欲しいのに。


「お嬢様は必死なのかもしれません」

「必死?」

「はい、ご自分の世界を守る為に…同時に旦那様をも」


リサ先生はただ静かに叔父様の言葉に耳を傾けていた。
同時に心配そうな表情をオペラグラスで見る。


嘘をつく大人の顔は解りやすい。


でも…


「あの子が成人するまでは守ってやりたいんだ」

「お嬢様はいずれ皇族に嫁がれるましたら…お助けできることは少ないですものね」

「ああ…君に家庭教師を頼んだのは誰よりも信頼できるからだ。貴族であればあの子を利用する可能性がある」



リサ先生を選んだのは信頼できるから?
私の為?


「君は貴族も通う名門校で首席だった。誰よりも優秀だが身分で差別をしないだろう…ご両親も商人として優秀だからな。最高の教育をしたい」

「現在父に専門書を発注してもらってます。来月のお嬢様のお誕生日の為のドレスの布も…」

「ああ、ありがとう。君を家庭教師に選んでよかった。あの子の心を守って欲しい」



私はオペラグラスを握り、盗み機器するのを辞めた。


「私…馬鹿だわ」



叔父様がどれだけ私を愛してくれているか解っていたのに解っていなかった。



思えばリサ先生は私に何一つとして強要しなかった。


「社交界で己の身を守れるのは己自身。その為の武器を身につけさせたい」

「教養は時として最大の武器になります。微力ながら私も盾になります」

「ああ…私は姉の代わりはできない。だが保護者としてできることがある」


私はこっそり部屋を出て行った。



「リサ先生は敵じゃない…」


頑なに閉ざしていた心の扉を開くきっかけになった。


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