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③
しおりを挟む私は考えを改めた。
これまで自分の能力に過信をしてしまった。
元から負けず嫌いだった私は負けっぱなしでは気が済まない。
なんとしてもぎゃふんと言わせてやりたいと思い、その日から眠る以外の時間は机にかじりついた。
「お嬢様、あまり無理を…」
「この私に敗北の二文字はないわ!」
机に向かい記憶力を向上させるべく特訓をした。
「私はもうチェスを見るのも嫌なんだが」
「絶対に先生に勝つの!」
チェスの特訓も欠かすことなくだ。
そのおかげでチェス大会でも優勝してしまった。
なのに――!
「本日は危なかったですわ」
「くっ…」
勝てなかった。
「何でよ!」
「落ち着かないか」
「完璧だったはずよ!」
何度やっても勝てない。
戦術を変えてみたのに、リサ先生に勝てなかった。
「お前はまだ幼い…リサは学生時代チェス大会に何度も優勝しているし、実家は商会だ。チェスの名人も出入りしているからな」
「くっ…」
なんてことなの。
強い相手と対戦しているからというの?
「お嬢様は外に出ることをなさいませんし」
「あんな場所行きたくないわ」
両親が死んだときに憐れみながらも私を馬鹿にして。
挙句の果てに私を利用しようとする連中ばかりじゃない。
頭の悪い連中ばかり。
血のつながった家族でも利用できるかどうか。
「マリー、お前が人間不信になっているのは解る。だがそんなに視野を狭めては馬鹿な連中と同じになる」
「叔父様!私をあんな連中と一緒になさるの!」
「そうではない…一部の人間の所為でお前の交流関係を絶つような真似をしないでほしい。リサ先生は信頼できる人だ。同時に貴族の令嬢以上に教養がある」
叔父様は私に嘘は言わない。
リサ先生は教養のある人だし、貴族令嬢ではないのに所作が完璧だった。
「お前が信頼できる人かどうか、観察するんだ…周りの声に耳を傾けるんじゃない」
「はい…」
本当は解っている。
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でも私は天邪鬼だった。
素直になれるようないい子じゃないから。
「マリー。お前は優しい子だ。ちゃんと解っている」
「悪い子よ」
「そんな顔をする子は悪い子じゃないよ」
優しい手が私の頭を撫でる。
叔父様を困らせている自覚はあるけど、今更簡単に人を信じることはできなかった。
だから私なりのやり方でリサ先生を見ることにした。
「そうよ。こういう時は」
お母様の日記を引っ張り出す。
「迷ったときは徹底的に調べろ…なるほど探偵になるのね」
お母様の日記に書かれていたことを実行することにした私はリサ先生のことを徹底的に調べることにした。
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