上 下
119 / 169

しおりを挟む





お嬢様の挙式が終わってからも私達の周りでお祝い事が続いた。


長らく独身だった現皇帝陛下が、婚約を発表した。
何でも相手は隣国の王女殿下で恋愛結婚だったそうだ。

外交的にも、良縁だったので先帝陛下は両手を上げて喜ぶ一方で、一部ではその婚約をよく思わない貴族もいたそうだ。


理由は王女殿下は男尊女卑を時代遅れと考え、女性こそが前に出るべきと考えているのだ。
これまで女性を下に見ていた官僚も、王女殿下が王妃となれば政治にも口出しができるだろうし、平等な判断をされればこまるのだ。


しかも王女殿下の祖国では王族はある程度の年齢になるまでは市民に交じって民の生活を学ぶことが定められている。


その為身分で差別を毛嫌いし、この世で最も許せない行為は女子供を虐げる行為だとか。
他国では少ないが王女殿下の祖国では虐待は最も重い罪であり、夫が妻に手を上げたことで刑務所行きになったり、多額の賠償金を請求されたケースも少なくない。


先々代から君主が女性となったことから改変されたとか。


「タイミングが良かったな」

「はい…そうなると現在刑務所に入っている彼らは」

「ああ、本当に運が良かったな」


もし、少しのタイミングがずれていたらシンパシー家は極刑だっただろう。


「彼らはまだマシだろうな?なんせ今は世界で最も安全な場所にいるのだから」


ある意味塀の向こう側は安全だろう。


否定はしない。


「まぁ、一時的だが」

「ある程度の期間がすぎれば牢から出されるのですよね」

「ああ…犯罪者にとって牢から出た瞬間が地獄の始まりだ」


屈辱だという人はいるけど考え方によれば牢の中に入れは雨風はしのげて食事も用意されているのだから。


「塀の外は怖いだろうな。陰口で人を殺せる」

「ええ…」


彼らはいい意味でも悪い意味でも世間知らずなのだから。


「まぁ牢の中も身体的には平和だろうが、精神的にはどうだろうね」

「精神的…ですか?」

「ああ」


私は彼らが今どうしているかなんて詳しく知らないし、知る必要もないから聞こうとも思わなかった。


だってもう関係ないのだから。


けれど私は知らなかった。

彼らは私が思う以上の多くの人を苦しめ、追い詰めていたことにより制裁を受けることになったということを。



しおりを挟む
感想 452

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。

Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。 ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。 なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。  元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。  出ていくのは、貴方の方ですわよ? ※カクヨム様でも公開しております。

かりそめの侯爵夫妻の恋愛事情

きのと
恋愛
自分を捨て、兄の妻になった元婚約者のミーシャを今もなお愛し続けているカルヴィンに舞い込んだ縁談。見合い相手のエリーゼは、既婚者の肩書さえあれば夫の愛など要らないという。 利害が一致した、かりそめの夫婦の結婚生活が始まった。世間体を繕うためだけの婚姻だったはずが、「新妻」との暮らしはことのほか快適で、エリーゼとの生活に居心地の良さを感じるようになっていく。 元婚約者=義姉への思慕を募らせて苦しむカルヴィンに、エリーゼは「私をお義姉様だと思って抱いてください」とミーシャの代わりになると申し出る。何度も肌を合わせるうちに、報われないミーシャへの恋から解放されていった。エリーゼへの愛情を感じ始めたカルヴィン。 しかし、過去の恋を忘れられないのはエリーゼも同じで……? 2024/09/08 一部加筆修正しました

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

クリスティーヌの華麗なる復讐[完]

風龍佳乃
恋愛
伯爵家に生まれたクリスティーヌは 代々ボーン家に現れる魔力が弱く その事が原因で次第に家族から相手に されなくなってしまった。 使用人達からも理不尽な扱いを受けるが 婚約者のビルウィルの笑顔に救われて 過ごしている。 ところが魔力のせいでビルウィルとの 婚約が白紙となってしまい、更には ビルウィルの新しい婚約者が 妹のティファニーだと知り 全てに失望するクリスティーヌだが 突然、強力な魔力を覚醒させた事で 虐げてきたボーン家の人々に復讐を誓う クリスティーヌの華麗なざまぁによって 見事な逆転人生を歩む事になるのだった

処理中です...