上 下
110 / 121

しおりを挟む





無表情の弁護士は僕にもう一通書類を見せた。


「何だこれは」

「先日酒場で暴れた時に壊した調度品です。マダムスコットから支払うようにと。後こっちらはリサさんのご実家の商会にて迷惑行為並びに脅迫まがいな真似をしただけでなく営業妨害をした損害賠償金です」


「そんな!」


リサへの慰謝料だけでは飽き足らず、これ以上僕から金を奪うのか!

なんて酷いんだ!


「その賠償金はロンドが一人で払うべきだわ」

「姉さん?」

「だってそうでしょ?アンタが単独で行ったのでしょう?」

「けど!」

「アンタ、さっき言ったわね?私達と縁を切るって…それなら私達は関係ないわね!」



自分の事は棚に上げて、今度は僕を糾弾し始めるなんて!


「私は仕事もあるもの…だからなんとかなるわ。ライアス、もし離縁するなら慰謝料を払うのは私じゃないはずでしょ?だって貴方にも非があるし…もっと腕の良い弁護士を上司に頼めば」


「残念だけど、貴女は今日から無職よ」

「は?」


姉さんが無職ってどういうことだ?


「貴女の出勤態度の悪さが問題になっているわ。貴女、子供ができずに苦しんでいる同僚に精神的に追い詰めようかことを言ってお邸を辞めさせたんですってね?」

「何を…」

「独身の殿方にセクハラまがいな事をしたり、仕事に一生捧げた女性にも侮辱したそうで、お邸の旦那様は相当お怒りで解雇する予定だったそうよ」

「嘘よ!」

「そうそう、同僚の方から貴女を訴える手紙を預かってきましたの。一応まだ籍が入っているから代わりに謝罪しておいたけど。今後は貴女が対応してくださる?」

「私が解雇ですって…この私が」


姉さんはそのまま膝をつきながら現実逃避をした。


「じゃあこれからどうなるの!」

「お前…」


「だって!ロンドは無職なのに!ダンディまで無職なんて‥‥ただの金食い虫じゃない!これからどうするのよ!」


「金食い虫ですって…」


姉さんが顔を上げ母さんを睨みつけたヒステリックに叫んだ。



「自分では何もしない出来損ないの癖に!金食い虫はアンタじゃない!」


「なんてことを言うの!うわぁぁん」

「うざいから泣かないでよ!泣いてなんでも上手くいくなら私も泣きたいわよ。でも意味ないのよ…泣く前になんなんとしなさいよ!」


「サンディ!お前も止めろ」


「一家の主ならなんとかしてよ父さん!」


そうしたらいいんだ。
何とか逃れる方法はないのかと考えるのに必死だったがそんな僕を義兄は冷めた目で見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!

山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。 居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。 その噂話とは!?

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】ちょっと待ってくれー!!彼女は俺の婚約者だ

山葵
恋愛
「まったくお前はいつも小言ばかり…男の俺を立てる事を知らないのか?俺がミスしそうなら黙ってフォローするのが婚約者のお前の務めだろう!?伯爵令嬢ごときが次期公爵の俺に嫁げるんだぞ!?ああーもう良い、お前との婚約は解消だ!」 「婚約破棄という事で宜しいですか?承りました」 学園の食堂で俺は婚約者シャロン・リバンナに婚約を解消すると言った。 シャロンは、困り俺に許しを請うだろうと思っての発言だった。 まさか了承するなんて…!!

このパーティーはもう卒業式の後でしてよ? 貴族学校を卒業して晴れて大人の仲間入りを果たしてるのですから対応も大人扱いにさせていただきますわね

竹井ゴールド
恋愛
 卒業パーティーで王子が男爵令嬢を虐げていたと婚約者に婚約破棄を突き付けようとする。  婚約者の公爵令嬢には身に覚えのない冤罪だったが、挙げられた罪状を目撃したというパーティー参加者が複数名乗り出た事で、パーティーは断罪劇へと発展した。  但し、目撃者達への断罪劇へと。 【2022/8/23、出版申請、9/7、慰めメール】 【2022/8/26、24hポイント1万2600pt突破】 【2022/9/20、出版申請(2回目)、10/5、慰めメール】 【2022/11/9、出版申請(3回目)、12/5、慰めメール】 【2022/12/24、しおり数100突破】 【2024/9/19、出版申請(4回目)】

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...