今日で都合の良い嫁は辞めます！後は家族で仲良くしてください！

74とある夫人の事情～グレイスside①

平民でありながらも両親は私に最高の教育を学んでほしいと、首都の貴族院に入学させたてくれた。


身分差別は今よりもずっとひどく、人間以下の扱いを受けることも少なくなかった。
けれど、私は負けん気が強かった。


幸いにも私を理解してくれる人が一人だけいた。
それが後の私の夫だった。


子爵家の三男で、将来は独立しなくてはならないため、苦労していると聞かされた。
私達は目指すものが同じで惹かれあった。


互いに思いを寄せるまで時間はかからなかった。
実家からは三男ということで冷遇されており、私達の結婚も反対はなかった。


…というよりも私が平民でも結婚を反対されなかったのは家が裕福だったからだ。
夫の実母、つまり私の姑当たる人は悪い人ではないのだろうが少しばかり依存心が強く、気に入らないと泣いてでも我儘を押し通そうとする。


私はずっと歯を食いしばり、勉強をして一人で踏ん張ってきた。
だからなのか、当初から仲良くなるのは難しいとさえ思った。


遠回りに義母は私を否定することが多かった。


「貴女は本当の娘じゃないから…」

血が繋がっていない。
義理であるのは確かだけど同じく、嫁である義姉に対しては甘かった。


これ見よがしに贔屓していた。
私は彼女にとって嫁ではなく召使でしかなく行事の時は侍女と同じかそれ以下だった。


その度に夫は…


「母上、グレイスは召使じゃないんですよ」

「あら？もとは平民なんだからなれているでしょ？エアリーさんは慣れていないのだから」

「彼女は…」

「だって貴族ですもの」


長男の嫁のエアリーさんは下級貴族出身だった。
けれど、貴族とは名ばかりで裕福ではないし学校だって最低限だわ。


大学まででていないから色々と足りない部分があった。


その癖世渡り上手というべきか。


「酷いわグレイスさん！私に学齢期がないことを貶してそんな本を見せびらかして」

「え？」

その日はサロンでとある本について議論していた。
けれど、本をあまり読まないエアリーさんは内容は解らず話題にもおいてきぼりだった。

だからそれとなく話題を振ったのに自慢したと誤解をされてしまい。



「お前の嫁はなんて厭味ったらしいんだ！」

「これだから学歴しかない女は！」


義兄と義母に泣きつき私は悪者にされてしまった。


そんなつもりはないのに。
でも、彼らは私が気に入らなかったのだ。


それからだった。
たびたび嫌味を言われるようになり、最後は私の仕事にまで口を出すようになったのだ。


当時は、女性が外で仕事をするのは珍しく教職は狭き門だった。


その狭き門を潜り抜けた私は小学校の教師をしていたのだけど、それをよく思わなかったのだった。