上 下
85 / 121

しおりを挟む





首都に到着してすぐに私は手紙を書き、旦那様の手である方に手紙を送ってもらった。



その方はグランドール辺境伯爵家の執事として働いているそうだ。
実家は平民であるが、奨学金で学校に入学し、卒業まで主席を守り抜いた後にグランドール辺境伯爵家の執事長にその才能を見込まれたとか。


大変真面目で、当主様からも気に入られているとか。
ただ、辺境地で原因不明の事故が多発したことにより調査に向かい。

その後も領地代行を行っていることから多忙だった。
現在は感染病の対応に追われ、一時は自身も感染している可能性があるので帰れなかったとか。



サンディ様が頻繁に実家に戻っていたのも長らく夫が不在で一人で育児をするのが負担になったと考えられるが、嫁ぎ先の実家に同居していると聞いていた。


ただ、お姑様が厳しい方で虐められていると聞いたけど。


「その虐めという表現が間違いという可能性もある」

「え?」

「まぁ、私が知る限り彼女は少しばかり思い込みが激しい…」

「正直に勘違い女だと言ってあげればいいではありませんか。あんな人と話があうお姑さんはいませんわ」


スパっと切るお嬢様に私もそうなのかも?なんて思ってしまう。

だけど、あの方はシンパシー夫人同様に遠慮がない。
そして自分の考えに共感できない人間は排除という考えがある。


泣いて我儘を押し通すシンパシー夫人。

笑顔で自分の考えは間違っていない。
意に添わなければ無理やりにでも自分の思い通りにさせようとする感じがする。


「そもそも、嫁姑の関係が最初からいいわけがない。少しずつすり合わせないとならないだろう」

「最初から自分の考えを押し付けていたんではありませんの?それで関係が悪くなったとしても自業自得…というか、グレイス様も似たような事を言っていた気が」


「グレイス様ですか…」


そういえばお嫁さんとの関係で悩んでいるようだったけど、あれからどうなったかしら。

何所に住んでいらっしゃるか解らないから相談もできないわ。


「ではとりあえず、その方にアポを取れるかどうか試そう。手紙を書き、状況を説明しよう」

「忙しいですわ。夜には大叔父様と食事会ですのよ」

「はい?」


食事会?
そんな話は聞いていないわ!


「えっとお邸でお茶をすると…」

「お茶をした後に邸の庭園でバーベキューをするようで」


一体どんな食事会なのか不安を抱くことになるのだが。



「ほーっほっほっ!固くなるでない。まぁまずはこのサーモンの皮を食すが良い」



噂とは大変恐ろしいものだった。

英雄皇帝とよばれ、生まれながらの皇帝。
政治の神。

覇王等とも呼ばれている先帝陛下は。


なんというか陽気なおじいさんだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】ちょっと待ってくれー!!彼女は俺の婚約者だ

山葵
恋愛
「まったくお前はいつも小言ばかり…男の俺を立てる事を知らないのか?俺がミスしそうなら黙ってフォローするのが婚約者のお前の務めだろう!?伯爵令嬢ごときが次期公爵の俺に嫁げるんだぞ!?ああーもう良い、お前との婚約は解消だ!」 「婚約破棄という事で宜しいですか?承りました」 学園の食堂で俺は婚約者シャロン・リバンナに婚約を解消すると言った。 シャロンは、困り俺に許しを請うだろうと思っての発言だった。 まさか了承するなんて…!!

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!

山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。 居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。 その噂話とは!?

処理中です...