上 下
84 / 169

しおりを挟む


お嬢様は本当に前向きだわ。
そして考え方が開けているといっても過言ではないかもしれない。


「私、やらないで悔やむなら全部してから悔やもうと思いますの!東の国ではこういう言葉があるのは知ってまして?当たって砕けろ!」


「砕けるな!」

「七転八起!いきあったりばったり!」

「前者はともかくとして後者は論外だ!」


前者はいいんだ。
こうして旦那様の苦労は増えていくのね。


なんとなく気の毒に思ってしまった。



でも、やる前に悔いるよりもその方がいいわ。


「私もやってみたいわ」


「は?」


「お嬢様のように全部できることをしてから後悔したいですわ」


「リサ、何か悩みがあるならどんどん言いなさい。君は我慢し過ぎた。もっと我儘になってくれ」


旦那様は私を甘やかせすぎな気もするけど。

もし許されるなら、私はミレイの事を手助けしてあげたい。


「旦那様このような時ですがよろしいでしょうか」



ミレイを彼らから引き離すのは簡単だけど、それは同時に親から引き離す行為になる。


サンディ様がどう思っているかは解らないけど、ミレイを施設に送ってはい終わりでは済まないのだから。


「実はある方に手紙を出したいのです」


私はシンパシー家の親族との付き合いがほとんどない。

サンディ様の夫である人面識はない。
結婚式はこじんまりとしたもので、お祝いの言葉と品を受け取った程度だし。


でも、手紙を受けた限りは良識のある良い方だという印象が強い。
サンディ様の義母の方もことは良く存じ上げないけど。



「現在シンパシー家は危うい状況下にあります」

「ああ、ロンド・シンパシーが仕事を解雇になったようだな」

「姉君も実家に戻って来たままです。実家がごたついているならば問題がでてきます」


これまでは比較的裕福な生活ができていただろうけど、シンパシー家の事情は負債が多く、生活費だけでなくその負債を私とロンドでなんとかしていた。

でも、私があの家を出たことで負担はロンドに行っているだろう。

シンパシー夫人が外で働くことや、倹約をするとは考えにくい。

そうなると生活苦になって、ミレイのお世話もままならない。


お世話がままならないだけならいいけど、ミレイに手を上げるなんてことになったら最悪な未来が予想される。

まだ赤ちゃんのあの子は逃げ道がないのだから。



「元義姉の旦那様に連絡を取っていただきたいのです」


だからこそ、私はお節介を焼くことにしたのだ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました

柚木ゆず
恋愛
 今から10年前――わたしが12歳の頃、子爵令嬢のルナだった頃のことです。わたしは双子の姉イヴェットが犯した罪を背負わされ、ルナの名を捨てて隣国にある農園で第二の人生を送ることになりました。  わたしを迎え入れてくれた農園の人達は、優しく温かい人ばかり。わたしは新しい家族や大切な人に囲まれて10年間を楽しく過ごし、現在は副園長として充実した毎日を送っていました。  ですが――。そんなわたしの前に突然、かつて父、母、双子の姉だった人が現れたのです。 「「「お願い致します! どうか、こちらで働かせてください!」」」  元家族たちはわたしに気付いておらず、やけに必死になって『住み込みで働かせて欲しい』と言っています。  貴族だった人達が護衛もつけずに、隣の国でこんなことをしているだなんて。  なにがあったのでしょうか……?

【完結】私がいる意味はあるのかな? ~三姉妹の中で本当にハズレなのは私~

紺青
恋愛
私、リリアンはスコールズ伯爵家の末っ子。美しく優秀な一番上の姉、優しくて賢い二番目の姉の次に生まれた。お姉さま二人はとっても優秀なのに、私はお母さまのお腹に賢さを置いて来てしまったのか、脳みそは空っぽだってお母様さまにいつも言われている。あなたの良さは可愛いその外見だけねって。  できる事とできない事の凸凹が大きい故に生きづらさを感じて、悩みながらも、無邪気に力強く成長していく少女の成長と恋の物語。 ☆「私はいてもいなくても同じなのですね」のスピンオフ。ヒロインのマルティナの妹のリリアンのお話です。このお話だけでもわかるようになっています。 ☆なろうに掲載している「私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~」の本編、番外編をもとに加筆、修正したものです。 ☆一章にヒーローは登場しますが恋愛成分はゼロです。主に幼少期のリリアンの成長記。恋愛は二章からです。 ※児童虐待表現(暴力、性的)がガッツリではないけど、ありますので苦手な方はお気をつけください。 ※ざまぁ成分は少な目。因果応報程度です。

嘘を囁いた唇にキスをした。それが最後の会話だった。

わたあめ
恋愛
ジェレマイア公爵家のヒルトンとアールマイト伯爵家のキャメルはお互い17の頃に婚約を誓た。しかし、それは3年後にヒルトンの威勢の良い声と共に破棄されることとなる。 「お前が私のお父様を殺したんだろう!」 身に覚えがない罪に問われ、キャメルは何が何だか分からぬまま、隣国のエセルター領へと亡命することとなった。しかし、そこは異様な国で...? ※拙文です。ご容赦ください。 ※この物語はフィクションです。 ※作者のご都合主義アリ ※三章からは恋愛色強めで書いていきます。

私が我慢する必要ありますか?

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? 他サイトでも公開中です

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。

Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。 ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。 なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

【本編完結済】この想いに終止符を…

春野オカリナ
恋愛
 長年の婚約を解消されたシェリーネは、新しい婚約者の家に移った。  それは苦い恋愛を経験した後の糖度の高い甘い政略的なもの。  新しい婚約者ジュリアスはシェリーネを甘やかすのに慣れていた。  シェリーネの元婚約者セザールは、異母妹ロゼリナと婚約する。    シェリーネは政略、ロゼリアは恋愛…。  極端な二人の婚約は予想外な結果を生み出す事になる。

処理中です...