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⑩
しおりを挟む泣き止む気配がないミレイの鳴き声は耳障りなだけだった。
異臭がして、耐えきれない。
「ロンド!おむつを交換してちょうだい」
「やだよ。汚いじゃないか」
「私は腰が痛いのよ…長時間抱っこは無理なの」
だからってなんで僕がそんなことをしないとだめなんだ。
「お風呂の準備もして、清潔なタオルを用意して」
「だったら父さんがしてくれよ僕はミレイの世話なんてしたことがないんだ」
「私は家長だぞ。そんなことできるか!お前の姪だろ」
これまで亭主関白だった父さんは子供のおむつの交換はおろか、手伝いもするわけもなく僕に役目を押し付けた。
「姉さん!」
「アンタ、リサちゃんの隣で見ていたんでしょ」
睨みつけるように僕を見る姉さんに何も言えなかった。
「見ていたけど…大体子供の面倒は女の仕事だよ!男のすることじゃない!」
そうだ。
見てはいたけど、手は出さなかった。
決してできないからじゃない。
そもそも子供の世話は母親がすべきだろ。
子供だって母親の方が喜ぶし。
「子供の面倒が見れない母親なんて母親じゃない!子供をあやせない親なんて親じゃないんだから!」
「ロンド、アンタ最低ね」
「なんでだよ!母親なんだからできて当たり前だろ?生まれつき母性があるんだから…男には母性がないんだから赤ん坊が何を言っているかわからなくて当然だ」
リサができたのがすごいんじゃない。
できて当然…いやできなくてはおかしんだから。
「ロンド…酷いわ!貴女まで」
「母さん?」
「私を母親失格だなんて!わぁぁぁん!」
「ロンド!お前は自分の親に親失格と言うなんて」
母さんが再び声を上げて泣き出し、恨めしそうな表情で父さんが睨む。
その間にもミレイは泣き続ける。
「うわぁぁぁん!」
「酷い…酷いわ」
ミレイの悲鳴に近い泣き声と母さんの泣き声が響き耳が痛い。
もうこんなのは耐えられない。
そんな時だった。
「失礼します!」
誰かが我が家に入ってきた。
その人物は…
「これは!」
「なんてことだ」
単身赴任をしていた義兄と姑だった。
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