81 / 169
⑩
しおりを挟む泣き止む気配がないミレイの鳴き声は耳障りなだけだった。
異臭がして、耐えきれない。
「ロンド!おむつを交換してちょうだい」
「やだよ。汚いじゃないか」
「私は腰が痛いのよ…長時間抱っこは無理なの」
だからってなんで僕がそんなことをしないとだめなんだ。
「お風呂の準備もして、清潔なタオルを用意して」
「だったら父さんがしてくれよ僕はミレイの世話なんてしたことがないんだ」
「私は家長だぞ。そんなことできるか!お前の姪だろ」
これまで亭主関白だった父さんは子供のおむつの交換はおろか、手伝いもするわけもなく僕に役目を押し付けた。
「姉さん!」
「アンタ、リサちゃんの隣で見ていたんでしょ」
睨みつけるように僕を見る姉さんに何も言えなかった。
「見ていたけど…大体子供の面倒は女の仕事だよ!男のすることじゃない!」
そうだ。
見てはいたけど、手は出さなかった。
決してできないからじゃない。
そもそも子供の世話は母親がすべきだろ。
子供だって母親の方が喜ぶし。
「子供の面倒が見れない母親なんて母親じゃない!子供をあやせない親なんて親じゃないんだから!」
「ロンド、アンタ最低ね」
「なんでだよ!母親なんだからできて当たり前だろ?生まれつき母性があるんだから…男には母性がないんだから赤ん坊が何を言っているかわからなくて当然だ」
リサができたのがすごいんじゃない。
できて当然…いやできなくてはおかしんだから。
「ロンド…酷いわ!貴女まで」
「母さん?」
「私を母親失格だなんて!わぁぁぁん!」
「ロンド!お前は自分の親に親失格と言うなんて」
母さんが再び声を上げて泣き出し、恨めしそうな表情で父さんが睨む。
その間にもミレイは泣き続ける。
「うわぁぁぁん!」
「酷い…酷いわ」
ミレイの悲鳴に近い泣き声と母さんの泣き声が響き耳が痛い。
もうこんなのは耐えられない。
そんな時だった。
「失礼します!」
誰かが我が家に入ってきた。
その人物は…
「これは!」
「なんてことだ」
単身赴任をしていた義兄と姑だった。
2,008
お気に入りに追加
5,127
あなたにおすすめの小説

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。


平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる