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突然の解雇命令。
仕事までも失うなんて!


「何故です!」

「何故だと?」


僕の勤め先でもある、服飾品を中心とする商会のミレディア商会の店主により解雇状を突きつけられた。


三流の商会ならば理不尽な理由で解雇されるが、難題も続く商会では理由なく解雇させることはできない誓約書を交わしている。


「旦那様!どうしてですか」

「どうしてだと?この期に及んでそんなことを言うのか。辞表を出すのを待っていたが、辞める気はなさそうだからな」

「何故私が辞める必要が…」


そもそも僕は解雇されるような失敗をした覚えはない。
学校を卒業してから数年、真面目に勤めて来たというのに!


「自覚無しか、我が商会では理由なしに解雇はしない。だが、我が商会の品を怪我した場合、法に触れるような真似をした場合に限り、解雇命令を下すと見習い時代に教えたな」

「はい、ですから…」

「我が商会は女性のお客様が多い。女性に暴力を振るうような人間をおけるか!」


普段冷静沈着な旦那様が机を叩きつける。


「俺達商人は信用が第一だ!お前は私達を裏切ったんだぞ!セレナの娘婿だから出来が悪くとも気長に見てきたが…この有様とは!」

「何を…」

「ギルドとしての才はない、商人としての才もまったくない。受付でも使い物にならないし、会計士にするも心配だったから一番簡単な事務を任せたんだ!」


僕は優秀だから事務を任されたんじゃないのか。
細かいところまで気が利くからと。


「最初はここまで使えないと頭を抱えたが、お前なりに努力しているのを見て見守っていたが…ここ最近のお前はたるんでいた。遅刻も多い、有休を使うのはいい…だが、皆が忙しい時に休みを取り、尚且つ受付嬢に対しても差別的な発言をしていたそうだな」

「僕はそんなつもりでは…仕事ばかりでは女性の幸せを逃すと」

「他人の幸せを何故お前が決める!何様だ!」

僕は悪気はなかった。
親切心で言っただけだったんだ。

少しの嫉妬心はあったのは確かだ。


僕よりも年若いのに、給金は上で優遇されている。
受付嬢なんて簡単な仕事なのに、お得様の貴族からも気にられているのが気に入らなかった。


「彼女達は未亡人だ!」

「は?」

「病で夫を亡くして子供を抱えている!結婚しないのは亡くなった夫に操を捧げているからだ!研修の時に受付嬢の事情はある程度話したはずだ!」

「えっ…」

「どうせちゃんと聞いていなかったんだろ!ちなみにお前の差別的言葉に他の職人達から抗議が来ている!」


机に置かれたのは手紙の束だった。

「お前に対する訴えだ。この時点で契約違反をしている」


「待ってください!僕は彼女達を傷つけるつもりは…」

「つもりで済むか!子供じゃないんだ。言い訳するな!」



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