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客に対して無礼極まりない発言だった。
黙っている僕に対して女主人は更に続けた。

「この世の女は男に従うような言い方だね。最低だね。アンタみたいなのをモラハラっていうんだよ」

「何だと!」

「あら怖い?拳を突き出して殴るのかい?別に構わないよ…その場合アンタがどれだけ無粋な男かこの店で晒すことになるよ」


何なんだこの女は!
僕は客だというのにありえない。

「出て行ってくれる」

「わぁ!」

水をかけられた。
コップではなくバケツでだ。

「貴様!」

「アンタごとき男に貴様なんて言われる筋合いないわ。本当に最悪だわ」

「そうよ!どんなお客さんにも平等に接するのがモットーだけど、女を見下す男は二度と来ないで欲しいわ」

「女将さんを馬鹿にするなんて最低!」


僕に暴言を吐いたのはこの店の看板娘達だった。
客にはかなりの人気があると聞くが、こんな性悪な女の何所がいいのか解らない。


「貴様らいい加減に…ぐっ!」

いきなり誰かに背後から掴まれる。


「おい、人の女房に何してやがる」

「えっ…」

見る限りやばそうな男だった。


「黙ってきいてりゃ、男がそんなに偉ないのか」

「ぐっ…」

声が出ない。
苦しい…誰かに助けを求めるも、誰も助けようとしない。


「お前みたいな屑男がいるから泣く女が多いんだ。女を見下す奴、女に暴言を吐く奴は男として、人として最低だ!お前は母親の腹から生まれて来たんじゃねぇのか」

「旦那、そいつに何も言っても無駄だぜ。元妻を召使のように使って、最後はポイ捨てしたんだからよ」

「見かねた後見人の貴族様が離縁をするように言うぐらいだぜ」

「本当に最低だぜ。そんなに女を見下したいなら嫁なんて取るなよ」

「本当に見ていて不快だぜ。女将もこんな男尊女卑男は出入り禁止にしろよ」


誰一人として僕を助けようとしない。
何故だ?

同じ男として僕の味方をしないなんてどうしてだ!
僕は間違ってない。

この世は男が動かしている。
女は夫の為に働くのが幸せじゃないのか!

夫に黙って尽くす。

なのに何故だ!



「解らないようだな。お前は今まで妻の苦しみを理解してなかったんだろう。いや、お前にとって妻は都合のいい消耗品か」

「な…ん…で」


どうして僕が責められないといけないんだ。

僕は間違ってないのに。
冷めた視線や軽蔑の眼差しを向けられる理由が解らなかった。




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