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69②
しおりを挟む退位してるものの、現皇帝陛下のサポートをしているとか。
なので忙しい中、時間を空けてくださったのだから失礼は許されないと気負っていたのだけど。
「先生、大伯父様は結構な暇人です」
「否定できないな」
「はい?」
私の考えを否定する二人に私は何故と思った。
もう高齢であるのに、政治的権力を持ち、お孫様を陰からサポートしているなんてすごいと思ったのだけど。
「あれは伯父上の嫌がらせだ」
「横からあれやこれやと口を出されるお兄様がお気の毒です」
「そうなんですか…」
てっきり私は陛下に懇願されたとおもったのだけど。
「孫を助けてやりたいという気持ち二割、口出しして虐めたい八割だ」
「ええ…非常に迷惑な方です」
噂というのはあてにならないと嫌と言う程解っていたけど。
「この程度で驚いてはなりませんわ」
「ああ、伯父上は元は海岸沿いの伯爵家だ」
「好物はお茶漬けですわ!」
先帝陛下の好物がお茶漬け?
「後はビスケットとプリンが大好物だな」
「ビスケット‥‥プリン」
平民が口にするお菓子ばかりだ。
「逆に社交界で出されるお菓子はあまり好きではありませんわね」
「ああ、フルコースは口に合わないとか。公務が休みの時は船を出して釣りを楽しんでいた」
「さようですか」
ああ、想像と随分かけ離れているわね。
「伯父上は皇族に養子に迎えられなければ海の男になりたかったと言っていた」
「海の男」
「今でもその夢は捨てていませんわ」
突っ込みどころ満載だわ。
歴代の皇帝陛下の中でも斬新なアイデアで改革を行い、敵国から責められないように要塞を作らせたりと優れていると言われている。
「噂は飛躍し過ぎだ…まぁ運は誰よりも良いが」
「後は図太いですわね」
本当に遠慮がないわね。
身内と言えど国の英雄なのに、いいのだろうか。
「リサ様、お顔をそのままに」
「すいません」
話に夢中だったけど、髪結師の方はしっかり仕事をしていた。
流石プロだ。
「良く似合っているよ」
「旦那様…」
「でも、私は何時もの君の方が好きだけど」
さりげなく甘い言葉を囁かれドキッとしたのだけど。
「…叔父様。そういうの後にしてください」
「マリー」
お嬢様の手厳しい言葉で現実に引き戻されながらも私の身支度は整いつつあるのだった。
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