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63⑤

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シンパシー夫妻が訪問した一週間後。
今度家族そろって押しかけて来た。


「お義母さん、お義父さん!」


「君にお義父と呼ばれるいわれはない。もう他人なのだからな」


何所までも図々しい連中。
あれだけ言ったのに、また来るなんて本当にどういう神経をしているのかしら。


強制的に出入り禁止にはできるけど、その場合もっと面倒な事が起きる。
傍にいる護衛騎士が今にもつまみ出そうとする勢いだったけど。

「ぎゃあああん!」

「どうかお願いします!姪のミレイは、リサに懐いていて」


今度は幼い姪をまでも連れて同情作戦ね。
周りの目もあるし、ここで私達が断れば今後商売に影響が出る。


だけど甘いわ。
同情で私達が動くはずがない。

商人というものをまるで理解していない。


「あああん!」

「この通り、泣き続けているのです!ミレイの為に」

「母親がいるだろう」


「娘は…」


「母親がいながら子供をあやすことができないとは母性がないのではないか?」

「なんてことを!」


先にリサに言った言葉だわ。


「祖父母なら孫は懐くものです。それとも嫌われてますの?」


「世話を真面にしていないのだろう?しかしおかしいな…子育てをした経験があるならその程度できるだろう?大の大人が四人で情けない」



「リサは一人で見ていたのに」


これ見よがしに嫌味を言うぐらいは許されるわ。
だって、リサは夜泣きをしても一人で面倒を見て、昼間は家事に仕事に赤ん坊の世話。


対する彼らは四人で見ているのに。


「それはミレイが機嫌が良かったからで!楽をしていたに決まってます」

「そうです!」

「やぁぁぁ!」

「ちょっ…いい加減にしろ!暴れるな!」


抱いている赤ん坊に怒鳴り散らすロンドに耳を疑う。

「どうして泣きやまないんだ!煩いと言っているだろ!」

「ぎゃあああん!やぁぁぁあ!」


赤ん坊に怒鳴ればどうなるか解っているのに。


…というか、今の時間帯を理解しているのかしら。


「貴方…」

「ああ」


こっそり、窓を開けて会話が聞こえるように仕組んだ。
隣近所に彼らの罵倒する声が聞こえるようにした。



しかもここは商会の玄関先。


「何あれ…」

「赤ん坊に怒鳴っているわ」

「なんて酷い親なのかしら」

「それにしてもあの泣き方…」


ひそひそと囁くお客様。
お得意様の中には中年の貴族夫人も多く、子連れの奥様も多いので冷めた目で見られる。


「ちょっとそこの人、まさか人さらいではないでしょうね」

「親なら子供がそんなに泣くなんておかしいわ」

「何を…」


声をかけた方は、お得意様の一人で辺境貴族の奥方だった。


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