63 / 121
63⑤
しおりを挟むシンパシー夫妻が訪問した一週間後。
今度家族そろって押しかけて来た。
「お義母さん、お義父さん!」
「君にお義父と呼ばれるいわれはない。もう他人なのだからな」
何所までも図々しい連中。
あれだけ言ったのに、また来るなんて本当にどういう神経をしているのかしら。
強制的に出入り禁止にはできるけど、その場合もっと面倒な事が起きる。
傍にいる護衛騎士が今にもつまみ出そうとする勢いだったけど。
「ぎゃあああん!」
「どうかお願いします!姪のミレイは、リサに懐いていて」
今度は幼い姪をまでも連れて同情作戦ね。
周りの目もあるし、ここで私達が断れば今後商売に影響が出る。
だけど甘いわ。
同情で私達が動くはずがない。
商人というものをまるで理解していない。
「あああん!」
「この通り、泣き続けているのです!ミレイの為に」
「母親がいるだろう」
「娘は…」
「母親がいながら子供をあやすことができないとは母性がないのではないか?」
「なんてことを!」
先にリサに言った言葉だわ。
「祖父母なら孫は懐くものです。それとも嫌われてますの?」
「世話を真面にしていないのだろう?しかしおかしいな…子育てをした経験があるならその程度できるだろう?大の大人が四人で情けない」
「リサは一人で見ていたのに」
これ見よがしに嫌味を言うぐらいは許されるわ。
だって、リサは夜泣きをしても一人で面倒を見て、昼間は家事に仕事に赤ん坊の世話。
対する彼らは四人で見ているのに。
「それはミレイが機嫌が良かったからで!楽をしていたに決まってます」
「そうです!」
「やぁぁぁ!」
「ちょっ…いい加減にしろ!暴れるな!」
抱いている赤ん坊に怒鳴り散らすロンドに耳を疑う。
「どうして泣きやまないんだ!煩いと言っているだろ!」
「ぎゃあああん!やぁぁぁあ!」
赤ん坊に怒鳴ればどうなるか解っているのに。
…というか、今の時間帯を理解しているのかしら。
「貴方…」
「ああ」
こっそり、窓を開けて会話が聞こえるように仕組んだ。
隣近所に彼らの罵倒する声が聞こえるようにした。
しかもここは商会の玄関先。
「何あれ…」
「赤ん坊に怒鳴っているわ」
「なんて酷い親なのかしら」
「それにしてもあの泣き方…」
ひそひそと囁くお客様。
お得意様の中には中年の貴族夫人も多く、子連れの奥様も多いので冷めた目で見られる。
「ちょっとそこの人、まさか人さらいではないでしょうね」
「親なら子供がそんなに泣くなんておかしいわ」
「何を…」
声をかけた方は、お得意様の一人で辺境貴族の奥方だった。
2,615
お気に入りに追加
6,012
あなたにおすすめの小説
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!
山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。
居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。
その噂話とは!?
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
【完結】ちょっと待ってくれー!!彼女は俺の婚約者だ
山葵
恋愛
「まったくお前はいつも小言ばかり…男の俺を立てる事を知らないのか?俺がミスしそうなら黙ってフォローするのが婚約者のお前の務めだろう!?伯爵令嬢ごときが次期公爵の俺に嫁げるんだぞ!?ああーもう良い、お前との婚約は解消だ!」
「婚約破棄という事で宜しいですか?承りました」
学園の食堂で俺は婚約者シャロン・リバンナに婚約を解消すると言った。
シャロンは、困り俺に許しを請うだろうと思っての発言だった。
まさか了承するなんて…!!
このパーティーはもう卒業式の後でしてよ? 貴族学校を卒業して晴れて大人の仲間入りを果たしてるのですから対応も大人扱いにさせていただきますわね
竹井ゴールド
恋愛
卒業パーティーで王子が男爵令嬢を虐げていたと婚約者に婚約破棄を突き付けようとする。
婚約者の公爵令嬢には身に覚えのない冤罪だったが、挙げられた罪状を目撃したというパーティー参加者が複数名乗り出た事で、パーティーは断罪劇へと発展した。
但し、目撃者達への断罪劇へと。
【2022/8/23、出版申請、9/7、慰めメール】
【2022/8/26、24hポイント1万2600pt突破】
【2022/9/20、出版申請(2回目)、10/5、慰めメール】
【2022/11/9、出版申請(3回目)、12/5、慰めメール】
【2022/12/24、しおり数100突破】
【2024/9/19、出版申請(4回目)】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる