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私達の離縁は既に正式に通っている。
なので、私を連れ戻すことなど無理な話だったけど。


既に常識が通じないようだ。


「あそこまで非常識な人だったなんて」

「町の方では騒ぎになっているのだけど、スコット先生が動いてくださっているわ」

「ただ、時間の問題だろ」


恐らくスコット先生の話は聞かないでしょうね。

「弁護士の方が接触しないようにと代理で話をつけてくださっているけど」

「ごめんなさい・・・」


ここまで来て二人に迷惑をかけることになるなんて。


「失礼します」

「旦那様?」


遠慮がちに旦那様が部屋に入ってこられた。


「この度は申し訳ありません。私の配慮が足りず」

「いいえ、伯爵さまが護衛を派遣してくださって助かりました」

「ええ…」


旦那様はすべてを予測していたのね。
だから護衛騎士を派遣してくださったのだろうけど、ここまでするなんて思わなかった。


「ただ、今後は我が家に留まっていただくのが一番安全なのですが」

「お気持ちは嬉しいのですが」

「商会を空けておくわけにはいきません」


商人である二人は仕事をほったらかしにするわけにはいかない。


「そうおっしゃると思っていました」

「ですがお気遣いは本当にうれしゅうございました。どうか娘をお願いします」


「はい、お任せを」


そう言い残して二人は邸に戻って行った。


「旦那様」


そのすぐ後に、伯爵家の騎士達が姿を見せる。


「つかず離れずの距離を守りお二人をお守りしろ。今度は容赦するな」

「「ハッ!」」


旦那様は命令をした後に騎士達は去って行く。


「あの方たちは…」

「我が家の諜報的な事も兼任している。二度目はない」


ようするに二度と二人に手を出されることはないと言うことだった。


「こんなことをするなら最初から殺し屋を呼べばいいのに」

「マリー・・・」


まだ言っていたのね。
そして何故いつも気配がなく部屋にいるのかしら?



「先生、私は早い目に首都に向かうべきだと思いますわ」

「え?」


「先帝陛下にご挨拶をして、叔父様と早く夫婦になった方が安全かと」


どうしてここまで急かすのだろうか。
それに先ほどの二人の決意に満ちた表情が気になった。


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