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しおりを挟む伯爵家の護衛騎士数名を実家に派遣したすぐの事。
事件は早々に起きた。
「あの人達が商会に!」
「ああ、約束も無しに怒鳴り込んできた」
実家の商会に怒鳴り込んできたとは穏やかではない。
お客様のいるのに営業妨害だと思ったが、伯爵家から派遣してもらっている護衛騎士の皆さんのおかげで怪我もなかったそうだ。
「一体何の用で」
「離縁の取り下げと、お前を帰せと…」
「冷静な話もできなかったわ。なんでもお孫さんのお世話ができないそうよ」
義姉は帰って来ていたのね。
どうなったかは想像がつくわ。
ミレイのお世話が上手く行かない。
あの子は他の赤ちゃんよりも世話がかかるし、熱を出しやすい。
私があの邸にいた時はあやすのは私、食事も私、夜泣きのお世話も私がしていた。
義姉はともかくとして、他の三人はミレイのお世話の仕方は解らないのだろう。
でも、元義母は子供を二人育てた人なのだから問題ないと思ったのだけど。
「まったく、お前に散々世話を押し付けておきながら自分達は何をしていたんだ」
「赤ちゃんのお世話は母親だから上手くできるわけじゃないのよ…子供を育てた経験があるなら解るはずなのに」
「そうね…」
でも、どうして両親に会いに行ったのかしら。
「町で爪はじきにあっているそうよ」
「え?」
「当然だろう…だが、そうなると生活も苦しくなるだろう」
広いようで狭い街だ。
近所付き合いがどれだけ大変か理解した。
面倒だと思う時もある。
でも、夫人会の皆さんは情に厚い人ばかりで本当に困っていたら助けてくれる。
ただ不義理な真似をすればどうなるか目に見えている。
「スコット先生達とも仲が悪かったようで」
「馬鹿な事を」
「スコット先生のような方を」
面倒見が良い方だった。
少し押しが強いところもあるけど、母性に溢れた方で。
筋を通せば解ってくれる人。
曲がった事が大嫌いで正義感が強い。
だからこそロンドが少し的外れな事をすれば注意をして咎めた。
それが気に入らなかったようだけど。
「あの町は奥様で回っている。その中でもスコット先生はリーダー的存在だからな」
「ええ」
私が思う以上スコット先生は怒っていたのかもしれない。
でも、また彼らが二人に接触する可能性があるかもしれない。
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