上 下
56 / 121

56

しおりを挟む


伯爵家の護衛騎士数名を実家に派遣したすぐの事。
事件は早々に起きた。


「あの人達が商会に!」

「ああ、約束も無しに怒鳴り込んできた」


実家の商会に怒鳴り込んできたとは穏やかではない。
お客様のいるのに営業妨害だと思ったが、伯爵家から派遣してもらっている護衛騎士の皆さんのおかげで怪我もなかったそうだ。


「一体何の用で」

「離縁の取り下げと、お前を帰せと…」

「冷静な話もできなかったわ。なんでもお孫さんのお世話ができないそうよ」


義姉は帰って来ていたのね。
どうなったかは想像がつくわ。

ミレイのお世話が上手く行かない。
あの子は他の赤ちゃんよりも世話がかかるし、熱を出しやすい。


私があの邸にいた時はあやすのは私、食事も私、夜泣きのお世話も私がしていた。


義姉はともかくとして、他の三人はミレイのお世話の仕方は解らないのだろう。

でも、元義母は子供を二人育てた人なのだから問題ないと思ったのだけど。


「まったく、お前に散々世話を押し付けておきながら自分達は何をしていたんだ」

「赤ちゃんのお世話は母親だから上手くできるわけじゃないのよ…子供を育てた経験があるなら解るはずなのに」


「そうね…」


でも、どうして両親に会いに行ったのかしら。



「町で爪はじきにあっているそうよ」

「え?」

「当然だろう…だが、そうなると生活も苦しくなるだろう」


広いようで狭い街だ。
近所付き合いがどれだけ大変か理解した。

面倒だと思う時もある。
でも、夫人会の皆さんは情に厚い人ばかりで本当に困っていたら助けてくれる。


ただ不義理な真似をすればどうなるか目に見えている。



「スコット先生達とも仲が悪かったようで」

「馬鹿な事を」

「スコット先生のような方を」


面倒見が良い方だった。
少し押しが強いところもあるけど、母性に溢れた方で。


筋を通せば解ってくれる人。

曲がった事が大嫌いで正義感が強い。
だからこそロンドが少し的外れな事をすれば注意をして咎めた。


それが気に入らなかったようだけど。


「あの町は奥様で回っている。その中でもスコット先生はリーダー的存在だからな」

「ええ」


私が思う以上スコット先生は怒っていたのかもしれない。


でも、また彼らが二人に接触する可能性があるかもしれない。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!

山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。 居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。 その噂話とは!?

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】ちょっと待ってくれー!!彼女は俺の婚約者だ

山葵
恋愛
「まったくお前はいつも小言ばかり…男の俺を立てる事を知らないのか?俺がミスしそうなら黙ってフォローするのが婚約者のお前の務めだろう!?伯爵令嬢ごときが次期公爵の俺に嫁げるんだぞ!?ああーもう良い、お前との婚約は解消だ!」 「婚約破棄という事で宜しいですか?承りました」 学園の食堂で俺は婚約者シャロン・リバンナに婚約を解消すると言った。 シャロンは、困り俺に許しを請うだろうと思っての発言だった。 まさか了承するなんて…!!

このパーティーはもう卒業式の後でしてよ? 貴族学校を卒業して晴れて大人の仲間入りを果たしてるのですから対応も大人扱いにさせていただきますわね

竹井ゴールド
恋愛
 卒業パーティーで王子が男爵令嬢を虐げていたと婚約者に婚約破棄を突き付けようとする。  婚約者の公爵令嬢には身に覚えのない冤罪だったが、挙げられた罪状を目撃したというパーティー参加者が複数名乗り出た事で、パーティーは断罪劇へと発展した。  但し、目撃者達への断罪劇へと。 【2022/8/23、出版申請、9/7、慰めメール】 【2022/8/26、24hポイント1万2600pt突破】 【2022/9/20、出版申請(2回目)、10/5、慰めメール】 【2022/11/9、出版申請(3回目)、12/5、慰めメール】 【2022/12/24、しおり数100突破】 【2024/9/19、出版申請(4回目)】

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...