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再婚の手続きが大方終わった後に残る問題は財産分与と慰謝料と二つの邸だった。



「本来ならあの邸の権利はリサにあるのだけど」

「取り戻したいとは思いませんわ」


元義両親と同居した三年間。
辛いことが多く一人で眠ったベッド。

生活感はほとんどなかった。


「ならば、買い取ってもらうしかない。後は…」

「同居前に住んでいた邸ですね。あちらはまだ残っていますが、土地、建物の所有権は半々です」


ただ、三年間人が住んでいない中、手入れをしたのは私だし。
ロンドは放置しているのだけど。


「ならば処分する方向で話を持っていけばいい」

「はい、私の私物だけを持ち出しても?」

「ああ」


話はとんとん拍子に進むも、業者に頼む込んだ方が安全と言われ従うことにした。
あの町には一度も戻っていない。


手紙で一度スコット先生で状況を聞いたけど、私が出て行った後も彼らは離縁に納得していないようだ。

里帰りということにしているらしい。



「しばらくあの場所にはいかない方がいい。ご両親にも護衛をつける」

「え?」


「君は伯爵家にいるからまず手を出すことは難しい。門前払いをされるだろうからね」

「はい」

そもそも平民である彼らが貴族のお邸に約束もなく訪問すること自体が間違いなのだけど。



「君との交渉を持ちかける為にご両親に接触するだろう」

「可能性があります」

「だが、君のご両親も毅然と振舞うだろうが…追い込まれた人間は恐ろしい事をするだろう。元よりあの家族は常識がない」


自分の要求をのませるために理不尽な言葉を並べて己の我を通そうとするのは安易に想像できた。


「だからこそ、護衛をつける。子爵夫人にも連絡しておく」

「ありがとうございます」

「夫婦になるんだ。遠慮することはない…君はなんでも我慢し過ぎだ」


私の手を優しく握りながら安心させてくれた。


我慢し過ぎか…



あの邸では我慢をしろとばかり言われていたのに。


「我儘を言って欲しい。妻の我儘を聞くのは夫の特権だろう」

「もう言ってますわ」

「我がままに入らないよ。マリーの我儘に比べれば」


遠い目をする旦那様。

そのタイミングで足音が聞こえる。



「少し嫌な予感がする」


普段は静かに歩くお嬢様がけたたましい足音を立てた。



「叔父様!暗殺者を雇ってくださいませ!」


乱暴に扉を開けられたと思えば物騒な言葉に笑顔が引きつる。
隣で旦那様の目が虚ろだったのは気のせいではない。





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