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42元夫の勘違い①
しおりを挟む伯爵様達がリサを連れて行った後に、役人が無礼にも邸に押し寄せて来た。
「何だ!何の真似だ!」
「この度、婦人会より通報がありまして」
無礼な団体は良く見ると福祉団体だった。
腕の腕章を見てようやく気付く。
あの迷惑な三人衆が役人に通報したことを。
「僕達は何も!」
「そうよ!なんて無礼な」
「訴えるぞ」
虐待何て勘違いだ。
不幸な事故が重なっただけなのにリサが大げさに騒いだ所為だ。
それに怪我だってリサが受け身を取ればあそこまでひどくならなかった。
これは冤罪だ。
あの伯爵は僕に嫉妬しているんだ。
だからこんな真似を!
「以前からこの町では噂になっていますた。奥方が不当な扱いを受け奴隷のように働かされていると」
「そんなの…」
「私達は噂だけ動きません。ですが証言をもとに調査させていただきました」
だったらその調査が間違いだろう。
「弁護士によれば、リサ・サスペリアが邸にて貴方達に暴言を吐かれ、精神的に痛めつけられていたとの報告を受けました。勿論その証言となる音声もございます」
「音声だって!」
「最近のものではありません…しかもご両親にも合わせないように仕組んだ事実もちゃんと調べがついております」
「ありえない…」
そんなものをいつの間に。
リサが用意した?
いや、ありえない。
だったら用意したのはあの生意気なお嬢様か?
今思えばリサが僕に逆らうようになったのはあのお嬢様の所為だろう。
「そんなもの、でっち上げだろ!」
「中には偽りの音声を作ることは可能です。ですが、鑑定士に聞かさせれば本物か偽りか解ります。音声鑑定という方法がございますので」
「じゃあ…」
「勿論鑑定済みです。貴方達が黒と言うことは解っていますので」
僕たちは無実だ。
リサを傷つけるような真似をしていない。
「僕は夫として妻を育てて…」
「育てる?異なことを」
「妻の人権を無視して、精神的に追い詰め彼女は薬を飲むほどに心を病んでいたというのに」
「薬?そんなの知らないぞ!なんてみっともない真似を…金の無駄遣いを」
僕は怒りを抑えられなかった。
あの程度で精神的に参るなんて、弱すぎるだろ。
これで良く家庭教師が務まるものだ。
やはりお情けで職を得ていただけだ。
学校では主席だったが所詮は女子だからだ。
男と同列で競えないのだと思った僕は内心で安堵していた。
リサは優秀ではない。
その事実が僕を落ち着かせた。
しかしその安堵の表情が誤解を生むことになった。
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