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怯えた表情の義母は後ずさろうとしたが、奥様の威圧感はすさまじく動くことができない。


「殴る価値もない女」

「なっ…」

「そんなにリサが妬ましかったのかしら」


義母が私に嫉妬していた?
奥様は何を言っているのだろうか。


「結婚しても自立して周りから愛されるリサ。貴族のお邸で教鞭を振るう彼女は輝いていたわ」


「私はリサに嫉妬なんて。むしろ逆で…」


義母の言葉に奥様は鼻で笑い、侍女長もきっぱり言い放つ。


「ないわね」

「ないですね」


清々しいまでさっぱりと言い放つ。


「どうしてリサ先生が貴方や義姉に嫉妬するの?地位も財産も、美貌も教養もすべて持っているのに。第一リサ先生のお母様が子供が出来なくて哀れ?その逆よ」


「何を言っているんですか。彼女は…」

お嬢様の言葉に私は驚く。
実家の家庭事情はお嬢様に詳しく話していないはず。


「リサ先生のお母様は子供が出来にくい体ではなく、むしろ逆よ」

「ご存じだったのですね。ああ、それから表向きは隠しているけどリサには妹がいましてよ…勿論愛人ではなくてよ?」


「どういうことです!」

「そのままの通りよ、まだリサが幼い頃に妹を養親縁組にしているわ。公にはされていないけど」


生まれて間もなく養子に出されたのはごく一部の人間しか知らない。


「ああ、それから彼女は子供ができないんじゃなくて作らないのよ…当時、内乱が起きた時期だったし」


「そんなの言い訳よ…そんな!」


「現実逃避をしたいならそうなさいな。リサが離縁した後他の殿方と再婚した時に解るわ」

「何を…」


ロンドがありえないと言うも奥様は笑みを浮かべる。

「これはおかしいわ。まさかないというの?リサはまだ若いわ。引手数多よ…できたら私の息子と一緒になって欲しいぐらいだし。正妻でなくてもいいから彼女が欲しいという貴族も多いのよ」

「何ですって!」


「本当に罪な女。それだけの魅力があるんだから」



奥様は私に対して過大評価をしている。
私の両親が今では商人として成功し、裕福であるからだ。


貴族と言っても恐らくお金に困っている貴族だけだろうし。


「先生、解ってませんわね?」

「はい?」

「まぁいいですわ。とにかく、三大虐待は重罪ですわ。しかも妻を殺そうとした映像はしっかり…それに証言者もいますのよ。ねぇ皆さま!」


お嬢様が裏口の方に視線を向けると、そこには。


「「「私達が証言します!」」」


スコット先生達だった。



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