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しおりを挟む僅かな時間、静まり返る。
私が何を言っているのか理解できなかったのか、ロンドは顔を引きつらせ笑っている。
「何を馬鹿な事を…拗ねているのか」
「そうよ。少し私達がミレイのお世話を頼んだのに」
「こんな馬鹿な事を」
彼らにとっての私は無償で働くメイド以下。
その程度でしかないのかと思ういら立ちを感じる。
でも泣くことはなかった。
「離縁状は後日用意します」
「何を言っているんだ」
「私は邸に戻るまで馬車の中で考えていたんですよ。和解する道を」
「大げさな…」
この期に及んでロンドはそんなことを言っているのね。
「子供の相手…我儘なお嬢様の遊び相手」
「なっ!」
昨日の暴言を告げるとロンドは驚く。
「リサさん!貴女…」
「あの時偶然にも馬車で伯爵家に戻ってきていたのです。お嬢様と一緒に」
「えっ…」
「私は情けなく思いました。ここまで愚かだったとは…」
「何だと!」
私は冷めた目で睨む。
ずっと逆らわない従順な妻でいた。
ロンドからしても私が言い返すなんて信じられないだろう。
「どうして貴方は変わったの…同居してからおかしくなってしまったわ」
「僕はおかしくない!」
「同居する前は私の仕事に理解をしめしてくれたし。私を見下すようなことは言わなかった。実家だから亭主関白を気取りたいと思ったけど、限度があるわ」
「なっ…」
「私は貴方の承認欲求を満たす道具じゃない。私にだって気持ちはあるわ…お義姉さんを助けたい気持ちはあるけど、どうして私だけ蔑ろにされるの?」
「蔑ろだなんて酷いわ…酷すぎるわ!わぁぁぁん!」
「なんて酷い事を!言っていい事と悪い事があるだろ」
義母は心が弱い人だった。
以前から少しだけ厳し事を言われれば邸に戻り泣きだしていた。
私も強く言えなかった。
「お前!」
胸倉を掴まれるも…
「泣けば貴方は解ってくれた?私の味方になってくれたのかしら?」
自分でも驚いた。
こんな皮肉めいた言葉を吐くなんて。
「リサさん!どうしてしまったの!」
「おかしいぞ!今まで素直でなんでも言うことを聞いていたのに」
「私はずっと貴方達に認めて欲しかった。家族として認めて欲しいが為にはいはい言うことを聞きました。でも間違いだと思ったんです」
「我儘もいい加減にしろ!このハズレ嫁が!」
「きゃああ!」
顔を殴られ床に叩きつけらる。
倒れ込んだ私は思わずテーブルクロスを掴み、テーブルに置かれているお皿やコップが床に落ちて破片が腕に刺さる。
「あっ…僕は悪くないぞ!リサが悪いんだ…夫に逆らうから悪いんだ!」
泣くものですか
こんな男に屈するなんて屈辱だわ。
「何だ!その目は!」
抵抗するかのように睨みつけたのが気に入らなかったのか胸倉を掴み更に殴ろうとした。
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