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しおりを挟む嵐が去つた様に静かになる中、私は邸に戻ると。
「リサさん、やっと帰って来たのね」
「昨夜は大変だったんだぞ!」
帰ってきて早々に、義父と義母が私を咎めた。
部屋の中の空気は悪く、一夜で散らかり放題だった。
「ロンドも大変で…」
「毎月一日空ける日は伝えてありますし食事に洗濯の準備はしてありました」
これまでだって一日邸を空けることはあった。
その場合は作り置きの食事の用意をして、不便がないようにしておいた。
「せめて食べ終えた食器を水に浸してくだされば良かったのに」
「なっ…お前!」
今まで一日空けてもここまで散らかり放題にならなかったのに。
「ロンド、掃除ぐらいできなかったの?」
「昨日は姉さんが来たんだ!」
「そうよ。一日中ミレイが泣いて大変だったのよ」
「お義姉さんがいたのでは…」
ここで疑問を抱く。
当事者である義姉は何をしていたのか。
あの場にも義姉の姿はなかった。
「サンディは同僚と食事に出かけていたのよ」
「何で一日中娘をほったらかしにしてですか」
「サンディは何時も頑張っているのよ!そんな言い方!」
私の言い方が気に障ったのだろう。
義母が声を上げた。
「家族なんだから助けてあげるのは当然だろう」
「そうだ!姉さんは同居もして、仕事もして…」
「私だって仕事も家事もしているわ」
義姉が大変なのは解る。
でも私は?
「仕事だっていっても姉さんとは違うだろ?子供相手だろ」
「そうよ。それにサンディは同居生活で大変なのよ」
「お前みたいに楽じゃないんだ。うちは母さんも優しくて仕事だってさせてくれているだろ!」
させてくれている?
私が仕事をするのは義母のおかげとでもいいたいのか。
「姉さんは子供もいるんだ。それに引き換えお前は子供がいないから楽をしているだろ」
「そうよ。未だに子供が出来ないのに」
「私達は可哀想だと思って…」
子供が出来ないのは私が悪いから?
以前の私だったら子供ができないことを申し訳なく思っていた。
だから何も言わなかった。
「第一、子供一人ぐらい楽勝だろ?」
「家族なんだから助けてあげないと」
「家族なんだから助け合おうべきだ」
この人達は家族だから助け合うべきだと言いながら、私を助けようとしないのか。
「それに子供一人でこれでは困るわ」
「え?」
「そうだ。ミレイに妹、弟ができた時どうするんだ。今後里帰りの時にリサさんがいなかったらどうするの?」
「そうだ。サンディが可哀想だろう?」
二人目を考えているってこと?
この状況でそんなことが言えるの?
「私が常にいるとは…」
「そうだわ。しばらく仕事を休んでくれない?今度家族水入らずで旅行に行きたいの」
「ミレイの面倒はリサさんが見てくれればサンディも休めるからな」
私は家族じゃないの?
ずっと耐えていた思いが。
喉から出かかっていた言葉を飲み込むことはできなかった。
けれどその前に、ロンドが放った言葉は私の中に残った僅かな愛情を壊すような言葉だった。
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