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しおりを挟む家事育児は嫁がするのが当たり前。
その考えを否定する気はないけど、手伝ってもくれないのか。
「おや?リサちゃん」
「あっ、おはようございます」
寝不足の状態で、早朝の水汲みをしていると隣に住んでいるスコット先生が洗濯物を干していた。
孤児院を運営しており、元は王立学園の教師で結婚と同時に退職した後に旦那さんが慈善活動をしており、その事業の一つ、孤児院や、小学校を設立している。
その補佐をしており、私も家庭教師という立場故に色々教わっている。
休みの日は孤児院の子供達に勉強を教えたり、炊き出しを手伝ったりもしている。
「いつの間に子供を産んだんだい?」
「いえ、この子は」
「あー、サンディが帰ってきているのかい」
「はい」
私の子供と間違えそうになったがすぐに気づく。
「貴女の子供だったらサンジュが自慢しているはずだからね」
「はっ…はは」
「久しく娘が里帰りしているから浮かれているのでろうね…でも、大丈夫?」
心配してくれるスコット先生に申し訳なくなる。
正直大丈夫ではないけど。
「顔色が悪いし、まだこの時期の赤ちゃんはすごく手がかかる。しかも他人ならなおさらね」
「まだ不慣れで…」
「不慣れとか関係ないよ。我が子でもこの時期の育児は逃げ出したくなる程しんどいんだよ」
じんわりと涙が流れそうになる。
誰も解ってくれないのにスコット先生は私の心の声が聞こえているのかとも思った。
「あー!」
「懐いているのね」
「そうでしょうか?」
スコット先生に手を伸ばし挨拶をする。
一晩だけだったのに、表情が豊かになったわね。
「きっとリサちゃんが好きなんだよ」
「だと嬉しいです。まだ至らなくて…」
「何言っているんだい?誰だって最初から母親になれないし、最初からできたら世の母親が怒るよ?私だって最初は母親としてダメダメで、ノイローゼを子供に当たりそうになったんだから」
「えっ?スコット先生が?」
「広い家の中一人でね。夫は多忙で家を空けることが多くて、お姑さんは厳しくて…毎日泣いていたよ。母親だって人間なんだから完璧じゃない…でも貴女は他人の赤ちゃんを面倒見て偉いよ」
どうしてスコット先生は私の欲しい言葉をくれるのかしら。
誰にも認めて貰えない、ダメな母親になると思う夫の言葉を洗い流してくれるようだった。
「不安で…全然上手くできなくて」
「誰だってそうだよ。サンディだって逃げたくて貴女に預けたんだ。貴女はよくやっているよ」
温かい。
スコット先生に手を摩られ私は涙を流した。
そうだ。
私はロンドにこうして欲しかったんだ。
初めての育児で苦戦している私の心に寄り添って欲しかっただけだったのだ。
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