7 / 169
7
しおりを挟む急いで邸内を整え、赤ちゃん用の椅子に離乳食の準備。
そのうえ大人五人分の食事を用意しててんてこ舞いだった私は一人で走り回った。
「お義母さん、お皿の準備をおねがいできますか」
「おい、そろそろじゃないか」
「そうだったわ。悪いけれど迎えに行くから後はお願いできないかしら?」
「えっ…」
「母さん、早く迎えに行こう。後は任せたから」
ロンドが義両親を急かしすべてを丸投げをして来た。
「私一人で…」
「これも嫁の役目だろ?侍女の仕事で慣れているし、大丈夫だって」
「そうね?よろしくね」
「帰る前にジュースを冷たくして、甘いものを用意しておいてくれ。サンディは疲れて帰ってくるからな」
「…解りました」
嫁として舅と姑に口答えすべきではない。
そう思い私は言葉を飲み込んだ。
同居生活をしてまだ一年未満。
どちらかが譲らないといけないのだからと我慢をした。
これがそもそもの間違いだった。
「ただいま!」
二時間ほどしてから三人は帰って来たのだが。
「おかえりなさいませ。いらっしゃいませお義姉さん」
「いらっしゃいだなんて、ここはサンディの家でもあるのよ?」
「そうだぞ。他人行儀じゃないか。まったく」
出迎えをするとなぜか怒られてしまった。
そんなにおかしい事を言ったのか。
「ちょっと、そんな言い方」
お義姉さんは咎めてくれたけどロンドは私をしかりつける。
「いいんだよ姉さん、こういうことはしっかりしつけないと。リサ、君もシンパシー家の妻として姉さんを見習ってくれよ。姉さんは僕たちの自慢なんだから‥‥妻が至らないと姉さんの恥になる。解ったか」
この言い方…
何なの?
何時もならこんな風に他人の前で叱ることはしなかったのに。
「もうそのくらいになさいなロイド。まだ同居して間もないんだから、慣れていなくて仕方ないわ。それに妻としての作法はこれから私がしっかり仕込むし」
お義母さんまでどうして?
「母さんまでそんな言い方可哀想よ。ゆっくりでいいのよ。とりあえず冷たい飲み物をくれない?あっ、それから娘にもミルクを上げたいからお水を」
「はい」
遠回しに私のダメっぷりを指摘するようだったけど、何も反論せずに従った。
だけどロイドの態度はこの時だけではない。
この後もロイドの横暴な態度は続き、義母も静観しながら止めることもなかった。
「ミレイがまた泣いているわ」
「リサさんお願い」
「はっ…はい」
お茶の準備をする最中、まだ生後6か月の姪は頻繁に泣き出し、泣き出すと私にあやすように言う義母。
だけどすぐに泣きやませることはできずロイドが私を咎めた。
「おい、子供を泣きやますこともできないのか!」
「今から学べてよかったわね。きっといいお母さんになるわ」
「そうだな。サンディが帰ってきてくれてよかったな」
笑い声が聞こえる中。
私は食事もとれずに一人で姪をあやすことになったのだった。
私を見ながら笑う彼らと一緒に笑う彼らはその後も私のダメ出しを続けたのだった。
1,154
お気に入りに追加
5,211
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。
[完]僕の前から、君が消えた
小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』
余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。
残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。
そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて……
*ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。
婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください
八代奏多
恋愛
伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。
元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。
出ていくのは、貴方の方ですわよ?
※カクヨム様でも公開しております。
【完結】義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります〜義妹達は華麗に笑う
鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、お姉様の婚約者、私にくださらない?地味なお姉様より私の方がお似合いですもの!
お姉様、お姉様のお家。私にくださらない?お姉様に伯爵家の当主なんて務まらないわ
お母様が亡くなって喪も明けないうちにやってきた新しいお義母様には私より一つしか違わない双子の姉妹を連れて来られました。
とても美しい姉妹ですが、私はお義母様と義妹達に辛く当たられてしまうのです。
この話は特殊な形で進んで行きます。表(ベアトリス視点が多い)と裏(義母・義妹視点が多い)が入り乱れますので、混乱したら申し訳ないですが、書いていてとても楽しかったです。
自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる