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61責任の重さ
しおりを挟む風のような速さだった。
肉眼でとらえることができなかった。
気づくとナイフは床に叩きつけられ、アグネスは腕をひねり上げて押さえつけられていた。
「いい加減にしろ」
「痛い!止めてぇ!」
「今頃か弱いふりをしても無駄だ」
泣きそうな声を出すも誰も同情はしない。
「レグルス様!」
「アリオット、この女を拘束しろ」
「承知しました」
風のように早い対応だった。
「正直、君達には幻滅している。この学園は気に入らないことがあれば暴力を振るい、このような狼藉をするのか」
「お言葉ですが、彼女と我らを一緒にするのは…」
レオの言葉に異論を唱えたのはケネオス様だった。
「君はこれまで、何をしてきた?」
「は?」
「部外者の立場では言う資格はないのは解っている…だが、彼女だけが何故責任を負わされた?君も同じ辺境貴族の者で学園の風紀を嘆いていたのなら何故だ」
「それは私の仕事では…」
「責任を押し付け、自分は関係ないと言って逃げていたんだろう」
「随分な言い方ですね」
レオは今でも悔やんでいたのかもしれない。
何もできないことを。
留学生であるレオはできることは限られていた。
でも、働きかけてくれていたことは後から知ったのだけど、過去の事をまだ悔やんでいた。
「関係ないならば、今後の警備責任と風紀の乱れは君一人ですべて責任を取るということだな。現時点での問題も」
「なっ!」
「アグネス嬢を一人で校舎を歩かせる許可を出したのは君か?それともこの場にリーゼロッテ嬢がいるのを解って接触させたのか?」
「それは…」
レオの言葉に何も言えなくなる。
そもそもアグネスは普通の生徒と異なった扱いを受けている。
一人で勝手に出歩くことは許されるのか?
何より私と簡単に接触できたことに今更ながら違和感を感じた。
「危険行為をする生徒を野放しにしておいて彼女を責めるのはどうなんだ」
「彼女に関しては私の仕事では…」
「リーゼロッテ嬢は、在学してからの二年間。常に目を配っていたが?君はどうだ」
レオの言葉に周りの生徒の非難がケネオス様に集中した。
「確かにそうよね」
「あんな危ない生徒を野放しにするなんて」
「リーゼロッテ様が警備責任をしていた時は大事にならなかったわね?」
静観していた生徒が口々に言い出す。
私の仕事は本当に地味で気づかれにくいものだけど、見てくれている人はちゃんといるのだと解って嬉しかった。
「せめて彼女の今後はちゃんと見て欲しいものだ…そういえばもう一人謹慎中の生徒がいたな」
「え?」
「彼も来週には復学するそうだが、彼の監視役は君がするのだろう?」
「はい?」
サリオンの事だった。
彼も謹慎処分が解けた後もこの学園に通うことが義務付けられている。
でも、まさかその監視役が彼だったとは。
「君は辺境家の代表であるならば彼の監視もしっかりしてくれるのだろう?間違っても他の生徒に危害がいかないように…それから他のトラブルも君ならば完璧に処理してくれるのだろうな」
「そんな…」
ようやく彼は気づいたのかもしれない。
学園内のトラブルを完全に回避なんて不可能なことを。
できるのは中位を促し、被害を最小限にすること。
管理するなんて不可能なのだから。
「使えないと思いましたが多少は役に立つんですね。多少はですが」
「ああ、ミジンコ程度だが」
そしてキャンベルさんとお兄様、どれだけレオが嫌いなのかしら。
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