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第二章魔導士の条件
27目を疑う光景
しおりを挟むこれは何なのか。
映像を見ながらメアリは言葉を失った。
『何だ貴様は!』
『お止めください!小さな動物を虐待するなんて』
『無礼者!』
『コパン!』
映像から映し出されたアークとユーフィリアはあろうことにも無抵抗の少年を殴り蹴りの繰り返しをした。
「どうして…止めて!止めてよアーク。ユフィ、止めて!」
力ある物は弱き者に力を持って接してはならない。
例え平民が危害を加えようとも魔力持ちが手を上げれば一瞬で命を奪うことができる。
物心つく前から領地に住まう貴族の子供は教育を受けて来た。
特に聖騎士の称号を持つアークは力が強いのでコパンのように訓練も受けてない平民が成す術もないはずだ。
『お止めください!うちの若い者が無礼をしました…ですが、この魔獣は従魔であり…』
『平民の癖に煩いわよ!』
『主任!』
ユフィ―は指図されたことを不快に思い杖で殴り突き飛ばした拍子に壁に叩きつけられ傍に置いてあった薪が落ちて行く。
『主任!』
『あああ!』
大量の巻が倒れ下敷きになってしまう。
『フンッ、身の程を弁えないからよ。天罰だわ…いい気味ね』
『本当にこんなのが学園にいるとは…身の程を弁えてそのまま下敷きになっていろ。俺達は悪くない』
(酷い…酷すぎる!)
これまで貴族絶対主義な思考を持っていたがあくまで身分の違いをはっきりさせなくては領民を導けないと言っていた二人の考えには理解できなくもないと思った。
領民と対等では情に流され万一の時判断を下せない。
メアリはまだ甘すぎる考えがあった事を解っていたので二人は大人だと思ったのに、これでは身分が低いだけで虐げているだけに過ぎない。
「酷い…どうして」
映し出された映像から見えたのは歪んだ表情。
他者を傷つけているのに笑っている二人が恐ろしく感じた。
「何故…どうして変わってしまった?」
――本当にそうか?
ふとメアリは自分に問いかけた。
この世には悪い人間と良い人間がいるのではない。
人は誰もしも悪意と善意を持っている。
ただ心の中は光と闇が常にあるが、闇に負けるか勝つかの違いだった。
「私のグリモワールが…」
傍に置いている白のグリモワールが光を放ち勝手に開かれページが捲られる。
「これは正義の女神?」
何も書かれていなかった本には絵が刻まれ剣と秤をもつ女神ペルセウスが光を放っていた。
「審判の女神でもあるペルセウス…真実を見極めないと」
メアリは二人の側面しか知らない。
けれど人間は誰でも誰も言えない別の姿を持っているのだからこそ、見極めなくてはならないのだ。
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※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
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