上 下
54 / 142
第二章魔導士の条件

27目を疑う光景

しおりを挟む




これは何なのか。
映像を見ながらメアリは言葉を失った。


『何だ貴様は!』

『お止めください!小さな動物を虐待するなんて』

『無礼者!』

『コパン!』


映像から映し出されたアークとユーフィリアはあろうことにも無抵抗の少年を殴り蹴りの繰り返しをした。


「どうして…止めて!止めてよアーク。ユフィ、止めて!」


力ある物は弱き者に力を持って接してはならない。
例え平民が危害を加えようとも魔力持ちが手を上げれば一瞬で命を奪うことができる。


物心つく前から領地に住まう貴族の子供は教育を受けて来た。
特に聖騎士の称号を持つアークは力が強いのでコパンのように訓練も受けてない平民が成す術もないはずだ。


『お止めください!うちの若い者が無礼をしました…ですが、この魔獣は従魔であり…』

『平民の癖に煩いわよ!』

『主任!』


ユフィ―は指図されたことを不快に思い杖で殴り突き飛ばした拍子に壁に叩きつけられ傍に置いてあった薪が落ちて行く。


『主任!』

『あああ!』


大量の巻が倒れ下敷きになってしまう。


『フンッ、身の程を弁えないからよ。天罰だわ…いい気味ね』

『本当にこんなのが学園にいるとは…身の程を弁えてそのまま下敷きになっていろ。俺達は悪くない』


(酷い…酷すぎる!)

これまで貴族絶対主義な思考を持っていたがあくまで身分の違いをはっきりさせなくては領民を導けないと言っていた二人の考えには理解できなくもないと思った。


領民と対等では情に流され万一の時判断を下せない。
メアリはまだ甘すぎる考えがあった事を解っていたので二人は大人だと思ったのに、これでは身分が低いだけで虐げているだけに過ぎない。


「酷い…どうして」


映し出された映像から見えたのは歪んだ表情。
他者を傷つけているのに笑っている二人が恐ろしく感じた。


「何故…どうして変わってしまった?」


――本当にそうか?
ふとメアリは自分に問いかけた。

この世には悪い人間と良い人間がいるのではない。

人は誰もしも悪意と善意を持っている。

ただ心の中は光と闇が常にあるが、闇に負けるか勝つかの違いだった。


「私のグリモワールが…」

傍に置いている白のグリモワールが光を放ち勝手に開かれページが捲られる。


「これは正義の女神?」


何も書かれていなかった本には絵が刻まれ剣と秤をもつ女神ペルセウスが光を放っていた。


「審判の女神でもあるペルセウス…真実を見極めないと」

メアリは二人の側面しか知らない。
けれど人間は誰でも誰も言えない別の姿を持っているのだからこそ、見極めなくてはならないのだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のシェリラは王子の婚約者として常に厳しい教育を受けていた。 五歳の頃から厳しい淑女教育を受け、少しでもできなければ罵倒を浴びせられていたが、すぐ下の妹は母親に甘やかされ少しでも妹の機嫌をそこなわせれば母親から責められ使用人にも冷たくされていた。 優秀でなくては。 完璧ではなくてはと自分に厳しくするあまり完璧すぎて氷の令嬢と言われ。 望まれた通りに振舞えば婚約者に距離を置かれ、不名誉な噂の為婚約者から外され王都から追放の後に修道女に向かう途中事故で亡くなるはず…だったが。 気がつくと婚約する前に逆行していた。 愛してくれない婚約者、罵倒を浴びせる母に期待をするのを辞めたシェリアは本当に愛してくれた人の為に戦う事を誓うのだった。

聖女でなくなったので婚約破棄されましたが、幸せになります。

ユウ
恋愛
四人の聖女が守る大国にて北の聖女として祈りを捧げるジュリエット。 他の聖女の筆頭聖女だったが、若い聖女が修行を怠け祈らなくななった事から一人で結界を敷くことになったが、一人では維持できなくなった。 その所為で西の地方に瘴気が流れ出す。 聖女としての役目を怠った責任を他の聖女に責められ王太子殿下から責任を取るように命じられる。 「お前には聖女の資格はない!聖女を名乗るな」 「承知しました。すべての責任を取り、王宮を去ります」 「は…何を」 「祈り力が弱まった私の所為です」 貴族令嬢としても聖女としても完璧だったジュリエットだが完璧すぎるジュリエットを面白くおもわなかった王太子殿下はしおらしくなると思ったが。 「皆の聖女でなくなったのなら私だけの聖女になってください」 「なっ…」 「王太子殿下と婚約破棄されたのなら私と婚約してください」 大胆にも元聖女に婚約を申し込む貴族が現れた。

婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ
恋愛
辺境伯爵次男のユーリには婚約者がいた。 侯爵令嬢の次女アイリスは才女と謡われる努力家で可愛い幼馴染であり、幼少の頃に婚約する事が決まっていた。 そんなある日、長女の婚約話が破談となり、そこで婚約者の入れ替えを命じられてしまうのだったが、婚約お披露目の場で姉との婚約破棄宣言をして、実家からも勘当され国外追放の身となる。 「国外追放となってもアイリス以外は要りません」 国王両陛下がいる中で堂々と婚約破棄宣言をして、アイリスを抱き寄せる。 両家から勘当された二人はそのまま国外追放となりながらも二人は真実の愛を貫き駆け落ちした二人だったが、その背後には意外な人物がいた

離れる手 繋ぐ言葉

桧山 紗綺
恋愛
双子のように似たお嬢様と自分。 自由に動けないお嬢様に代わり、恋人を作り、体験を共有する。 歪な関係は年に一度の祭りで出会った男性をきっかけに変わっていく。 連載ですが長さとしては短編くらいです。 ※昔短編の賞に応募した作品を少し改稿したものになります。 テーマは「白と佐知」「ストケシア」と同じですが内容は全く違うものになっています。 同テーマの作品は全部で4作品。 「小説を読もう」と同時投稿。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。  読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。 「私は君を愛することはないだろう。  しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。  これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」  結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。  この人は何を言っているのかしら?  そんなことは言われなくても分かっている。  私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。  私も貴方を愛さない……  侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。  そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。  記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。  この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。  それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。  そんな私は初夜を迎えることになる。  その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……    よくある記憶喪失の話です。  誤字脱字、申し訳ありません。  ご都合主義です。  

追放されましたが、私は幸せなのでご心配なく。

cyaru
恋愛
マルスグレット王国には3人の側妃がいる。 ただし、妃と言っても世継ぎを望まれてではなく国政が滞ることがないように執務や政務をするために召し上げられた職業妃。 その側妃の1人だったウェルシェスは追放の刑に処された。 理由は隣国レブレス王国の怒りを買ってしまった事。 しかし、レブレス王国の使者を怒らせたのはカーティスの愛人ライラ。 ライラは平民でただ寵愛を受けるだけ。王妃は追い出すことが出来たけれど側妃にカーティスを取られるのでは?と疑心暗鬼になり3人の側妃を敵視していた。 ライラの失態の責任は、その場にいたウェルシェスが責任を取らされてしまった。 「あの人にも幸せになる権利はあるわ」 ライラの一言でライラに傾倒しているカーティスから王都追放を命じられてしまった。 レブレス王国とは逆にある隣国ハネース王国の伯爵家に嫁いだ叔母の元に身を寄せようと馬車に揺られていたウェルシェスだったが、辺鄙な田舎の村で馬車の車軸が折れてしまった。 直すにも技師もおらず途方に暮れていると声を掛けてくれた男性がいた。 タビュレン子爵家の当主で、丁度唯一の農産物が収穫時期で出向いて来ていたベールジアン・タビュレンだった。 馬車を修理してもらう間、領地の屋敷に招かれたウェルシェスはベールジアンから相談を受ける。 「収穫量が思ったように伸びなくて」 もしかしたら力になれるかも知れないと恩返しのつもりで領地の収穫量倍増計画を立てるのだが、気が付けばベールジアンからの熱い視線が…。 ★↑例の如く恐ろしく、それはもう省略しまくってます。 ★11月9日投稿開始、完結は11月11日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

処理中です...