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第一章婚約破棄事件

24.頼み事

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お嬢様が部屋から出た後に旦那様もレオナルドの傍にいることになり、私と侯爵様だけが残った。


「急に申し訳ない」

「いいえ」


真剣な表情をする侯爵様。
とても思い詰めた表情をされています。


「伯爵夫人、恥を忍んで頼みがある」

「何でしょう」

「娘を…リリアンを嫁に貰ってくれないだろうか」

「はい?」

これはどういう事でしょうか?
深々と頭を下げられ、あろうことにも皇太子妃候補のお嬢様を嫁とは。


「私には親族はいない。もし何かあった時に頼りはいない。故に娘を任せられるのは伯爵夫人以外にいない。貴女以上に逞しく頼りがいのある女性はこの世界にいるものか」

これは褒められているのか貶されているか解りません。

「あの…」

「本当ならばレオナルドをリリアンの婚約者に頼むつもりだったんだ」

「え!」

驚愕の事実に私は声をあげてしまいました。
だってそうでしょう?

身分からしても釣り合いませんもの。


「娘はレオナルドを好いている。しかし立場を考え気持ちを押し殺しているのだ」

「好いてくれているとは思いましたが…まぁ」


確かに今まで思い当たる節は合ったのです。
リリアンお嬢様はレオナルドとは幼馴染で幼少期から共に過ごし、気持ちを預けておられましたし。

「陛下の申し入れを断りことは当時では難しかったのだ。しかし此度の一件により陛下は婚約解消を考えてくださっている」

「そうだったのですか」

「今回の一件で私はレオナルド以外に娘を守ってくれる者はいないと痛い程痛感したよ。まぁ事件がなくとも、手札が揃えば婚約解消をする予定ではあった」


「侯爵様…」


最初から皇太子妃にする気はなかったのですが陛下の面子を潰さない為。
そして貴族派の勢いを止める為にも断れなかったのですね。


「妻はレオナルドとリリアンが結ばれることを願っていた。だが私の力不足故に」

「ですが、パワーバランスを考えれば難しいのでは」

通常、性別が逆であるならば問題はないでしょうが。
男性側の方が身分が低いと色々問題が生じるし、レオナルドを婿養子に出す事は難しい。


「いいや、伯爵夫人の血筋に業績を考えれば問題ない。何より、国一番の宝石商を営む子爵家とも懇意な関係であれば、反対意見を抑え込めるだろう。彼等は社会貢献もしているからな」


チェルベロ子爵家は資産家であると同時に社会貢献をしている事で陛下からも評価をされています。
チャリティーも行い、人徳者でもあります。


彼等が味方に付けば周りを納得させることもできましょう。


「しかし…」

「跡継ぎに関しては気にしなくてもいい。手は色々あるからな」


レオナルドをここまで認めてくださっているのは嬉しい事ですし、レオナルドもお嬢様を好いていますし。


旦那様に相談して見なくてはなりません。
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