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第一章婚約破棄事件
3.玉の輿
しおりを挟むアスガルト家は旧貴族派と新貴族の間にいる中立的な立場にありました。
表向きは皇族派となっておりますが、どちらにつくわけもなく、バランスを保っているのが現状です。
私の実家、クラーク家。
今は没落したも同然の状況ですが皇族派。
先代皇帝陛下に仕えておりました。
父は貴族の中でも酔狂だと言われており、下町に出るのを好んでいました。
父は貴族でありましたが母は平民だったらしく。
しかも私は連れ子だったので血のつながりはなかったのですが、父は私を我が子同然に可愛がり愛情を注いでくださいました。
私もまだ小さかったから気づきませんでした。
まぁ、周りの無神経な大人達が私のいる前でこれ見よがしに話していたので嫌でも気づかされました。
だとしても父は私を大事に育ててくれました。
父はどうにも人が好過ぎたのもあってか、友人に騙され多額の借金を負わされ過労死してしまいました。
ですが、自分に万一の時があった時の為にと財産を残してくれました。
しかしその財産も大富豪や名のある貴族からすれば莫大な資金と言い難いのでした。
しかも私は実子ではなかったので爵位を継ぐことはできません。
まだ社交界デビューもしていなかった事もありクラーラ子爵家を継承できなかったのです。
そう言った理由もあり私との婚約にはメリットがないからこそジャスパーは婚約解消を願ったのですが、破棄に持ち込みたかったのは世間体でしょうね。
解消では双方に円満だと見せたかったのでしょうが、破棄となれば片方に過失があったと見なされます。
ですが――。
「人生とは解らないものです」
「どうしたんだ?」
「いいえ、私は玉の輿に乗ってしまったのですから」
私は現実主義です。
童話のお姫様物語を否定する気はありませんが、俗にいうシンデレラストーリーには無縁だったのですが。
「没落した私が成り上がってしまいましたし」
「正式な言い方ではないな。父君は元より伯爵の地位を賜る予定だったのを事前に断っていただけだ」
父が亡くなって一年後。
私が婚約破棄をされた二か月後に、王宮からとある方が訪ねていらっしゃいました。
実は生前に父が過労死するきっかけたになった事業の工事で事故が起きました。
火元責任者は父でその責任を取るべく、財産の半分を奪われた後に父は無理に働き無くなりました。
その後にも事故が続き財産を更に差し押さえられたと思えましたが、その凍結は解かれたのです。
「事故の責任はお父様ではない事が解った事で、父の財産は戻りました。しかも父は自分の所為ではないことを解っていたとは」
「ギルド達を守る為にわざと自分の過失にしたとは。普通は無理だ」
「その後大変でした」
そのご友人がやんごなき身分の方でした。
「私の事情を知った後に泣くわ、怒るわ、で大変でした。お客様のクレーム処理は得意なのですか、あのように起伏の激しい方は初めてでして」
「それで片付けるのは君ぐらいだ。相手が公爵閣下だぞ」
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「鷲掴みどころか、引きずり出す気だっただろ」
当然です。
この私が目の前のチャンスを見す見す逃しましょうか?
「それに父の死因は過労死ではありませんでした。元より持病を患っていたのです。誰も悪くなりません」
「そういう所は父君に似たんだろうな」
困った表情で私を抱きしめるケンの言いたいことが解りかねます。
私は父に似ていたのでしょうか?
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