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第四章
14.お悩み相談
しおりを挟むあの日からロミオ様の態度が激変した。
サーシャが好きだとばかり思っていたのに、本当は私が好きだと。
頭の中が真っ白だった。
ロミオ様は嘘で告白をしたりキスできる人じゃない。
あの人はかなり潔癖症だ。
社交辞令は勤められるけど、愛想笑いができない不器用な人だった。
義務であっても好きでもない相手にキスなんて…。
――キス。
「のぉぉぉ!」
思い出すな私。
忘れようと必死に暗示をかけていたのに!
「おかしな奇声を発しないでください。防音設備があるとはいえ聞こえたらどうするのです」
「だってエカテリーナ様!ロミオ様がサーシャとワンツーフィニッシュじゃなくて。私とワンツーするんです!」
「今さらですわね。馬鹿ですわね?あの唐変木男が貴女を好いているなんて明白でしょう?第一、何故サーシャさんを好いている等と誤解が生じるのです?幼児でも解りますわ」
「僕は、あの言葉だけですべてを理解するエカテリーナさんに驚くのはおかしいのでしょうか」
「スコット、君は正しいよ」
「殿下!」
背後でスコットとロニー様の友情が結ばれていたが、今の私はそんなものどうでもいい!
「何でですか!」
「貴女、馬鹿なのか、そうではないかはっきりなさい!どうして普通の事ができなくて普通じゃないことを簡単にするんですの!」
「何でロミオ様みたいな優良物件の代表が、私みたいなのを好くんですか?容姿も学力も平均以下。魔力は残りかすですよ!」
「貴女はご自分を過小評価する癖を何とかなさい!ああ、こんな方が私を押しのけて白金になったなんて!」
「なら返上します!」
「できるわけないでしょう!」
私が白金になれたのはタイミングが良かった事と、周りに優秀なサポーターがいたからであって私の実力だけじゃない。
「大体、私が白金に選ばれたのはサーシャのおかげでもあるんです」
「貴女は自分がどれだけの事をしてしまったか解ってないのですわ!いい加減に現実を認め、ロミオ様のお気持ちも受け止めなさい。どっしり構えなさい!」
テーブルを叩かれ怒られてしまう。
そうは行ってもロミオ様は私に惚れる理由は何?
「幼い頃から孤独で爪はじきにされた妹君を救い、病で余命宣告された母君を救い、尚且つ伯爵家の問題を解決しただけでも十分すぎますわよ…まぁその前からあの方は貴女を好いてましたが」
「いや…婚約時に社交辞令で言われましたが」
「あのお世辞の一つも言えない失礼な男が言うわけないでしょ!」
「失礼って、ロミオ様は誠実なだけです」
確かにお世辞は得意じゃないけど、相手を傷つけるような事はしない人だった。
「物は良いようですわね?ああいうタイプの男性は一人の女性しか愛せないのです。宰相閣下がお手本ですわ。あの腹黒伯爵が」
「ユアン様は腹黒ではありません」
「腹黒ですわ。奥様が欲しいが為に宰相となり、反対する貴族をことごとく没落に追い込んだのですから。まぁ、元より違法行為をした貴族でしたが」
知らなかった。
あの温和で虫も殺さないような目をしたユアン様が。
「世間ではロールキャベツ男子と言うんですわ。ロミオ様だって大人しそうにしていて、何をするか…って、どうしましたの?」
「まさか、もう手を出されたんですか?」
はい、出されましたよ。
ばっちりと。
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