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第一章

8.愛しの友~ロベルトside

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あの事故から三か月、未だに王宮では騒ぎが落ち着いたとは言い難い。


だが、表面上は落ち着きを取り戻していた。


「はぁー…とにかくこれ以上騒ぎを広めるな。いいか、エリーゼ嬢の悪い噂は潰せ」

「しかし人の噂に戸は立てられませんが」

「すべての噂が消えなくてもいい。だが、エリーゼ嬢を貶める貴族には圧力をかけろ。それから婚約破棄などとふざけた噂を流す人間を叩け」


「殿下…」


俺が乗馬に等誘うべきではなかった。
後悔しても仕方ない事だが、俺は少しでも彼女に元気になって欲しいと思ったんだ。


社交界で酷い噂を流されている彼女が痛々しかった。

「彼女との婚約はあくまで政略結婚に過ぎなかったが…俺は彼女を気に入っていた」

「でしょうね。殿下の本性を知ってもお傍にいてくださいましたし。変態殿下とお付き合いをしてくださる人間の女性はどれだけいるか」

「お前、一応は俺の側近だろう」

「はい、不本意なながら」


本来ならば不敬罪になるというのだが、まぁ良いとしよう。


「それよりも問題が」

「ああ、姉の代わりに俺の婚約者になるとか戯言を言っている一件か?馬鹿を言え…あんな自意識過剰の頭の悪い女が王室に入れるわけがない。側妃にもなれないだろう」

「随分と辛口ですね?エリーゼ嬢に対しては寛大であったのに」

「あの女は昔に俺の愛しい弟を侮辱した。第三王子で体が弱いからといってな…」


本人からすればただの噂話に過ぎないだろうが、俺は覚えている。
生まれつき体が弱かった第三王子のロナウドを侮辱したのだからな!

ロナウドは優しく繊細な心の持ち主で、しかも母親が違う。
しかし大事な弟であることに変わりはないのに、愛する弟を侮辱した罪は重い。

「俺の愛しいロニーを侮辱するなど許せん」

「ですが既に社交界では噂になっていますよ…貴女様の婚約者候補は彼女だと」

「勝手に言わせておけ。しかも笑い種だな…俺は王位に興味がないのに、何故俺と婚約すれば王妃になると思っているのだ」


「王族以外で強い魔力を持っているのと自称美女ですからね」

「性格は不細工だ。俺は国の為でもあんな頭の悪い女はごめんだ。国が沈むではないか」

「確かに」

質素で慎ましやかなエリーゼとは反対に浪費家で派手好きで有名で、他の派閥の貴族とも度々問題を起こしている。

魔力が強いのと容姿が少しいいだけで、魅力など無い。


「貴族令嬢としての才は美しさだけじゃない。特に必要なのは嫁ぎ先を盛り立てる事や他の派閥ともうまくやる事だ。特に高位貴族ならば外交をしなくてはならない」

「無理でしょう?外交を潰すしかできないのでは?」

「だろうな」


まだ成人しておらず子供だから許されているようだが、あと数年すればデビューするのだ。
学校に通って人脈を広げるのにも、彼女は理解しているのだろうか?

自分に甘いだけの人間だけを傍に置くのではなく、本当の意味で手助けしてくれる人間に手を差し伸べるのが社交界で生きて行くのに必要になる。


「その点で言えば、エリーゼ嬢は優秀ですね」

「本人は自覚が無いのが恐ろしいがな」

トリアノン公爵家は慈善活動を行っており、エリーゼ嬢は医療ギルドにも顔を出している。
孤児院に寄付をして支援活動を行い、サロンには下級貴族でありながらも慈善活動を活発に行う貴族や、現役を退きながらも指導者となる貴族が集うサロンにも通っている。


「エリーゼ嬢の才は、目に見えないのだけだ」

「そういう方程、環境が整えば化けますからね」

「ああ」


本当の意味で俺達は手を取りえ合えるはずだ。
その為に今後は俺が彼女の手助けをしようではないか。

「それにロミオは俺の友だ」

「変態殿下の唯一のご友人でしたね」

「お前は本当に失礼な男だな!」

嫌がらせに今度、お茶に塩を入れてやろう。


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