婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

４９当然の対応

王宮内で呼ばれ私は振り向くが貴族の令嬢として対応した。


「何か御用でしょうか、ヴィッツ伯爵令嬢」

「どういうことなの！何で貴方の家に手紙を出したのに！迎えだって何で…どういうつもりなのシオン！」


婚約解消の手続きは三日前に終わった。
全ての手続きが終わり私達の間には何もないのだ。


「ヴィッツ伯爵令嬢、名前でお呼びにならないでいただきたい。私と貴女は婚約解消をしました」

「だから何よ…何？嫉妬？」

「私は貴女と婚約を結んでいましたがそのような感情を抱いた事はありません」

「は？」


政略結婚が常でも互いに歩み寄ろうとすれば愛情は生まれるだろうが、彼女は私に歩み寄る努力もしなかった。
ヴィッツ家からも邪険に扱われていた。


「私は…」

「シオン様！」

「リディア様…」


私の言葉を遮るように現れたのはリディア様だった。
後ろにディアッカとニナがいるので安堵した。


しかし、直ぐにこの場から離れた方が良さそうだ。


「何をしていらしたのですか」

「何でもありません。お迎えに行くのが遅れてしまって申し訳ありません」

時間はまだあるが、リディア様が迎えに来ていただく等。


「誰よ…」

「貴女こそなんですの？無礼者」


「なっ！」


私の腕にしがみ付きながら睨みつけるリディア様に驚く。
誰に対してもお優しいリディア様は理由なく他人を睨む真似をしないのだから。


「私の婚約者に何の用ですの？」

「は？何ですって！この私がいながら…」

既に婚約は解消になっているのに何を言っているんだ。
そもそも婚約解消を望んだのはどっちだ。



「元婚約者殿はお前に未練があるらしいな」

「馬鹿な事を言うな。迷惑だ」

「は？」

ディアッカの質の悪い冗談は迷惑極まりない。
しかもリディア様の前でこのような事を言うなど無礼だろ。


「シオン！この私に向かって…」

「貴女、何様ですの？」


私を睨み罵倒を浴びせようとする彼女にリディア様が冷たい言葉を浴びせる。


「貴女はシオン様の元婚約者…私は現婚約者ですわ。その意味を理解されてないようですわね」

「私を侮辱する気！私が声をかけてあげているのに…シオン！」

「ですから名前で呼ばないでください。そしてここは公の場です」


ここまで礼儀がなっていなかったか？
公の場で叫ぶような真似をする程作法がなっていなかったとは。


「貴女との婚約は円満な解消となっているはずです。何故そんなに怒るのか解りませんね」

「あれは…」

「ですが、私は貴女との婚約が白紙になったおかげで素晴らしい婚約者に出会えました。私にはもったいない方です」


「シオン様…」


公の場では無礼かと思ったがリディア様の肩を強く抱いた。


婚約者の矜持を守ることも私の役目。
ならば今この時だと思った。