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第四章

5.同盟

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二人にとってロイドは共通の敵だった。
アンジェにとっては親友を他国に売り、利用価値が無くなったと思えば手を離した癖に、今さらになって寄りを戻し、また利用する等許せない。


対するリデルはサンドラに呪いをかけられ、どれほど苦痛を強いられたか。
呪いを受けてから父親がどれだけ泣いて祈り続けていたか、今でも胸が痛むのだ。

挙句の果てにサンドラは愛する祖国を散々侮辱したのだ。
小さな国故に逆らうこともできないと知りながら、どれだけの侮辱を受けたか。


そんなリデルを救ってくれたのはリリアーナだった。
口では素直に言えないが、リデルは本当に感謝していた。

命を救うだけでなく国を救ってくれたリリアーナ。
誰よりも心優しく、聖女のような人だとも思ったからこそ、ロイドに再び利用されるなら許せない。



二人の気持ちは一つだった。


「私は、あの二人は必要ないと思いますの」

「無論じゃ、この世の災いじゃ。平和の為に滅するべきであろう」


「「絶対ぶっ潰す!」」


二人の心は一つだった。
共通の敵を葬るべく手を結び、事前に打ち合わせをした。


そして現在――。



「本当に馬鹿じゃ」

「ええ…頭にウジ虫が湧いているのではなくて?」


二人はとても恐ろしい目をしながら笑っていた。
これからどんどん追い込んで、他国の貴賓の前で恥をかかせてやろう。

そして二度と這い上がれないようにしてやろうと思った。



「それにしても粋な計らいですな」

「皇后陛下はもてなしの心を持っておられます」


(クソっ…おのれぇ!)

(なんたる屈辱!)


完全に蚊帳の外となった二人に声をかける者はいない。
それどころかスルーされ、リリアーナを褒めちぎられてしまっているのだから居心地は最悪だった。



「しかし、神秘的な宮殿ですな」

「これだけの宮殿に庭園を維持するとは…それに、貴重な果物や酒を仕込むとは」


「我が帝国は皇后陛下の提案により潤っております。貿易も活発にしておりますので」


フリーダは嬉しそうに色々と説明をする。
宮廷の維持費は国の税金で行われ、国を圧迫させることもあるのだが、その対策もイサラはしていた。


「我が帝国の水は海竜の使いが運んできますので、水に関しては心配ありません。作物も万一の時の為に兵糧を作っておりますので…備えもあります。皇后陛下はまず、国民を飢えさせないのを優先すべきだと申されまして」


「うむ、民あっての国故に、私も賛同するぞ」

「そうだな、民を蔑ろにしてはならぬ。まだ若いのに本当にしっかりしておるな…竜帝陛下は幸せじゃない。素晴らしい伴侶を得て」

「はい、皇后陛下は竜帝陛下の運命のお相手ですので」


遠回しにフリーダはロイドに嫌味を言った。
元婚約者のお前の相手ではない、本来の相手はイサラなのだと告げていた。


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