上 下
100 / 128
第三章

19.理解不可能

しおりを挟む





終始恐ろしい笑みを浮かべていたイサラにリリアーナはどうしたものかと思った。

暴れることはないし、普段通りにしているが。
内心ではかなりご立腹であることは解っているのだ。


「普段温厚な陛下があそこまでお怒りになるとは…」

「大人しい方程、一度ブチ切れると手に負えませんからね。竜の怒りでも起こせば地上なんて崩壊しますでしょう?特に正式な竜帝としての継承をされているのですから」

「ああ!」

ロッテンマリアは頭を抱えて涙を流す。
次から次へと難題が続き身が持てないのだから他の側近や女官達は同情の視線を送る。


「ロッテンマリアさん、どうぞ」

「ありがとうございます。あら美味しい」

「新作です」

給仕の服装をしながらさりげなくストレスを緩和するお茶を用意するレンは日に日に侍女としての仕事が上達し、現在はお茶師としての才能を発揮していた。


「レン様、貴方様は竜王よりも竜帝の傍仕えの才能の方がありますね」

「そうですか!照れますね」

(レン…褒められてないよ)


嬉しそうにするレンを見ながらリリアーナは憐れみの視線を送った。
既にメイリンはレンを侍従としていて欲しいと思っているのだが、最終目的は立派な竜王になる事なのだ。

しかし本人は傍仕えの仕事をとても気に入ってしまっているので困った物だが、今は優先すべきはロイドの行動だった。



「何で今さらこんな真似を…聖女様と婚約してるんじゃないの?何が目的かしら」

「大方、ご自分が見下した女性が女王として他国から慕われ評価されるので惜しくなったのでは?自ら宝を束成して置いて今さらですわね」


「酷いです。そんなの…」

レンは涙を浮かべながらロイドに対して嫌悪感を抱く。

「僕は人間の国の掟には詳しくないけど、浮気をして、リリアーナを捨てて、売り飛ばしたのに…酷すぎる」

純情可憐である意味一途過ぎるレンは、婚約者をまるで自分の消耗品のように使う行為が理解できなかった。

「僕には婚約者はいないけど…でも、そんな誠意のない事をするのは男じゃないってお父さんが言ってたよ」

地上を統べる赤竜は気性が激しいとも言われながらも不義を許さない性格だった。
そもそも竜族は高貴さを持ち、かなり一途な性格だったので、女性を食い物にする考えはなかった。


「まぁ、貴族の結婚は利益重視だから」

ロイドのやり方はあまりにも非常識だが、利益がなければ情などない。
特に高位貴族は自分の私欲の為に平気で婚約者を捨てる男が無きにしも非ずだったが、問題は何故このタイミングで手紙を送って来たか。

どうして送れたのかだ。


しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

婚約破棄、爵位剥奪、国外追放されましたのでちょっと仕返しします

あおい
恋愛
婚約破棄からの爵位剥奪に国外追放! 初代当主は本物の天使! 天使の加護を受けてる私のおかげでこの国は安泰だったのに、その私と一族を追い出すとは何事ですか!? 身に覚えのない理由で婚約破棄に爵位剥奪に国外追放してきた第2王子に天使の加護でちょっと仕返しをしましょう!

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜
恋愛
私の婚約も勉強も、常に邪魔をしてくるおバカさんたちにはもうウンザリですの! 私は私で好き勝手やらせてもらうので、そちらもどうぞ自滅してくださいませ。

処理中です...