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第二章

20.毒を以て毒を制す

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「役立たずが!」


結果を報告されたパイドラは使い物にならなくなった二人を追放した。


「予想外でしたわ海牛をペットにしているとは」

「しかも通常よりも大きいとは」

「そんなのはどうでもいいのよ!それよりも、次よ!」


こうなったら毒入りの食事を用意して苦しめてやろうと思った。




「失礼します」

「お食事が来たようですわね」


給仕係が食事を運んできた。


カーゴに乗せられている料理は変わった料理だった。

「あれ?新しい料理?」

「はい、こちらは清の国の伝統料理でございます。御毒見は既に済ませておりますので」

「そうなんだ」


テーブルに運ぶ給仕係はまんまと騙されたと思っていた。


(これで終わりよ!)


給仕係が、リリアーナが食事を食べ始めた。

しかし一向に苦しむ気配はなかった。


(おかしい…何で?)

(まぁ、待ちなさい。食後の酒は毒の塊よ?あれを一口でも飲めば…)


二人は毒が効いていないのかと思い、食後の酒にさらに強力な毒を忍ばせる。


「どうぞ」

「ありがとう」


酒を盃いっぱいに飲み干すも、変化はない。


「今日の酒、少し味がおかしいわ。古くなっているんじゃないかしら」

「え…」

「まぁ、私は多少古いお酒でも大丈夫だけど」


大丈夫とはどういうことだと思った二人は、まさか毒が効かないなんてありえないだろうとも思った。


「私は治癒師だから毒には強いの。青蜂に刺されても平気だったし」

((何ですって!))


青蜂とは虫の中でも最も強力な毒を持ち、大きなドリルで刺されれば赤蜘蛛の毒よりも強力だった。


「まぁ姫様ったら」

「私、森の神獣様に毒に耐性がつくように巨大毒蜂の蜂蜜を飲ませてもらったから…それ以降は毒が効かないのよね!」

(ふざけるな!)

(なんだそれは!)


毒の入った料理を食べてもピンピンしているわけだ。

元から毒なんて効かなかったのだ。


そんな中、汗を流している給仕係にリリアーナは気を使った。

「すごい汗だわ。水分を取って喉を潤しなさいな」

「「え!」」

「どうしましたの?姫様お気遣いですわよ?有難く頂戴なさいな」


差し出された飲み物は先ほど毒がたくさん入ったジュースだった。

「いっ…いえ」

「ご無礼を…」

「大丈夫よ?ロッテンマリアには黙ってあげるから…はい」


ここで断ると怪しまれるし、疑いを持たれてしまう。


結果的に二人は飲まざるを得なかったのだが――。


その後毒に苦しみ泡を拭いて倒れてしまった。


幸いにも死にはしなかったが、毒に苦しみ続けたのだった。



「何でよ!」

「パイドラ様!どうか落ち着いてください」


またしても作戦は失敗に終わってしまった。



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