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第一章
26.天性の才
しおりを挟む様々な誤解が生じながらもロッテンマリアの教育と言う名の扱きが始まった。
通常、貴族令嬢や一国の姫君が嫁入り前に教育を受ける場合はその国の文化や、マナーに外交に関する事を学ぶのだが、種族が異なる。
そして何より人間界の常識とはかなり異なっていた。
まず最初に受けた教育はというと。
ドス!
ドスドス!
森の中にて獲物に矢を放つ。
「お見事です!」
「大量、大量」
礼儀作法よりも先に狩の訓練を受けさせられていた。
次に海に乗馬の訓練。
しかし馬ではなく竜馬に乗り、どれだけ早くコースを一周しながら矢を放ち獲物を射る事ができるかの訓練だった。
「お見事です。完璧に竜馬を操っております」
「すごい…初めてでここまで」
元から領地で狩りをするのは日常茶飯事だった。
中には猛獣や珍獣を乗り回していたので、竜馬を乗ることぐらい簡単だった。
…というか、竜騎士よりも上手かった。
「私は自身が無くなりました」
「最初は振り落とされることが多いのに」
現役竜騎士はがくりと項垂れる。
何故かならこれ以上無い程竜馬はリリアーナに懐いている。
竜馬だけならまだよかった。
「姫様ぁぁぁ!お待ちください」
「うわぁ!気持ちい!」
竜馬だけでは飽き足らず、リリアーナは竜翼を乗り回し空のお散歩を堪能していた。
「凶悪な竜翼を乗り回すとは」
「皇族でもすぐ手懐けるのは難しいんだが…ありえない!」
大人しい性格の竜馬だけでなく気位が高く好戦的な暴れ竜までも簡単に乗り回していた。
「フレスベルグに比べればずっと大人しいから大丈夫です」
「フレスベルグ…」
世間では巨人族と言われ、翼一つで猛吹雪を起こす神鳥の一種だった。
北の国に巣を持ち、テイマーでも使役するのは難しいと言われているはずだが何故?と思う。
「私、動物には好かれやすいんです!」
「いえ、好かれると言うよりも…」
「隊長ぉぉぉ!竜翼が集まって来ています!」
何故かリリアーナの元に竜翼が集まり、まるで従うよだった。
「よーし、皆。今からお散歩よ!」
「「ギャウ!」」
声をそろえて鳴き声を上げる竜翼を見て竜騎士は絶句した。
まずありえない光景だった。
クリステリア帝国の名だたる竜騎士や竜使いですら竜翼を従わせることは難しかったのに、短時間で言う事を聞かせている。
しかし本人からすれば言うことを聞かせているのではない。
竜とは自由を愛する生き物だった。
リリアーナもまた、領地で自由に過ごし自然の恵みと共に生きて来た。
だからこそ解るのだ。
魔獣や野生の動物を無理矢理従わせるのではない、自由に動く彼等の気持ちを汲み取る事。
そして従わせるのではなく友人のように接することを第一としていた。
今でこそテイマーは魔獣を服従させているが本来は対等な関係を結んでいた。
真の契約とは彼等を奴隷に使うことではないのだから。
竜も人も境界線を越えることはできる。
できないのは互いの気持ちに壁があるからだった。
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