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第一章

閑話3.不穏な兆し③

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東と西の神殿が崩壊状態にある最中、聖女であるサンドラは窮地に立たされていた。


「聖女様、どうか…どうか、天の怒りをお鎮めください」

「これは天の神の怒りですわ」


聖女宮と呼ばれる宮殿に仕える巫女はサンドラに訴える。
東西南北に位置する神殿の守りが破られ、これまで大人しかった魔獣が突如として暴れ出したのだ。


暴れている魔獣は守護神となる獣だった。
こちらから危害を加えたり、契約違反をしない限りは人に危害を加えない理性を持った獣だったのにも拘らず何かに怒りを当てるように暴れていた。


「どうか…」

「祈っているわよ!けど…あいつ等言う事を聞かないのよ」

「祈りが足りないのです」

「はぁ?」

巫女達の言葉にサンドラは耐え切れなくなった。


「だったらアンタ達がそればいいでしょ?人に頼ってばかりで、祈りも満足できない癖に!私のおかげでいい思いをしている癖に!」

「聖女様、そのような乱暴なお言葉は御慎みくださいませ」

「聖女様としてあるまじき言葉ですわ」

巫女達は聖女に使えるが、盲目的なわけではない。
聖職者として正しい振る舞いをするように常に厳しく言われ育ってきたのだ。


「癒しの姫君はそのような…」

「あのブスと一緒にしないでよ!」

バシッ!


「きゃあ!」

「なっ…暴力を振るうとは」

リリアーナの名前を出され苛立ったサンドラは傍に置かれている杯を投げた。

巫女は頭から血を流してしまう。


「アンタが悪いのよ…私は悪くないわ」

「しっかりしてくださいリシェル!」

一番最年少のリシェルは頭から血を流していた。


「聖女様、リシェルに治癒を…」

「なんで私がそんなことをしなくちゃいけないのよ?」

「そんな!」


「私は聖女であり白き巫女なのよ?尊い身なのよ」

巫女達は言葉を失った。
これまでも傍若無人な態度は時折見て来たが、公の場では聖女らしく振舞っていた。


聖女としての役目がプレッシャーとなっているのだと思い、内だけはと耐えてたが。


日に日にサンドラの態度は傲慢になっていた。


「私は聖女よ!こんな平民の替えがいくらでもあるような女に何で魔力を使わないとダメなの?あのブスだって聖女の役に立てたんだから光栄でしょ?醜くって役立たずで治癒能力がある程度のもののけ姫なんだから」


人を人とも思わない言葉に巫女達は真っ青な表情になる。
そして以前からサンドラに対して持っていた疑念が更に強くなっていく。


サンドラの周りは黒い霧が囲みだし、言いようのない恐怖心が彼女達を不安にさせていた。

そして一度持った疑いは晴れることはなく、巫女達の心が次第に離れるようになったことをサンドラは知らずにいた。

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