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第一章
14.故郷への思い
しおりを挟むアンシー家の祖先は、ウィンドル王国が建国される前からある古い一族だった。
元は辺境地で魔獣とも共存していた事から女性は癒しの加護を受け、彼等と共に協力し合って生きて来た。
女性であれば癒し守りの力を授かり、男性ならば剣士としての才に愛される一族だった。
彼等は大地の声に耳を傾けていた。
人外な種族であっても慈悲の心を持って接したいたが、宮廷貴族達からすれば動物と共存する原始人だと馬鹿にする者も多かった。
特に幼少期を辺境地で過ごしていたリリアーナを田舎者だと馬鹿にする貴族は少なくなかったのだが、そんな貴族は同年代か、若い者ぐらいで、年配の貴族達はリリアーナの本質を見抜いていた。
リリアーナは幼くとも鋭い眼力と、確かな眼を持っていた。
心眼とも呼ばれている。
別に他人の心が読めるわけではないが、邪な事を考えていたり悪意を感じる事ができるのだ。
(今頃どうしているだろう?)
考えるの故郷と家族に、現在の状況だ。
(まぁ、あれはどうでもいいわ。破滅しようが自業自得だし)
公の場で婚約者を堂々と生贄にすることを宣言したローガスの事などどうでもいい。
最後まで申し訳なさそうにしていた王や王妃の事が気がかりだった。
オーディンやルーカスは王家に仕える騎士でもあるので、関係が壊れないか心配ではある。
私欲で反旗を翻す程愚かではないことも解っているが心配ではある。
(モスワは元気かな…)
領地で特に仲良くしてくれたモスワとガルーラは元気にしているか心配だった。
彼等は定期的に子孫を残す為に南に渡るが、繁殖期が終われば帰って来るようになっていた。
補足すればモスワは群れを大事にする習性がある故に身内に手を出すと暴れ出す傾向がある。
以前にもリリアーナを侮辱した貴族は毒虫に襲われ、海に沈めらていたことがあるのだが。
そんな事実をリリアーナは知らなかった。
「姫様、長湯は体に毒ですので」
「はい」
そろそろ上がるように促されお湯から出て行く。
「はぁー!風呂上りはやっぱりこれだ」
「姫様、はしたないですわ。それ以前にそれは」
「脱衣所に置いてあったんだけど…このミルク濃厚ね」
「そっ、それは海牛の乳では…」
「しかも薄めずに飲むなんて!」
海牛とは海に生息する生き物であり、クリステリア帝国とは異なり海で生活している。
海に生息する神でもあり海竜に仕えているが、穏やかな性格で人間にも友好的だと言われている。
「姫様…ジュゴンの乳は十倍薄めて飲むものでして…」
「もう既に飲んでいるので意味がありませんわ」
女官はシクシク泣きながらも、リリアーナはジュゴンの乳を気に入ったのか満足そうな表情をしていた。
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