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第二章北方四島の絆

7羊が集う

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シャルテルト領地は馬よりも一番多い家畜は羊だった。
馬車ならぬ羊車で移動をして祖先は羊と共に戦場に出ることも多かった。


彼等にとって羊とはパートナーだったらしいが、最近は羊を育てるのも一苦労だった。
馬こそが必要と考える貴族が多い中、羊の育成にお金と時間を費やすの意味がないと言って予算を削ったのだ。



だが大きな間違いだ。


「こん立派な羊は王都でもいない。それにこのモフモフの毛皮」

「メー」

「君は素敵な毛を持っているな。この毛があれば君のご主人様を楽にできぞ」

「メー!」

言葉は通じないがきっとこの羊達は察しているだろう。


「君の御主人の為に毛をくれるかい?」

「メェー!」


「フィルベルト様、羊までも」


心が通じたのか一匹の羊が俺にすり寄って来る。
するともう一匹、もう一匹と集まって来ていたのでモフモフを堪能した。


「いやぁ、ここまで人に慣れた羊は始めただ。前侯爵」

「ムートンとお呼びください」


「ムートン」


何故膝をつく。
そして何故側近達も頭を下げるんだ。


「我が君よ!」


「は?」

「貴方様は私達の主でございます」


「え!」


何でいきなり頭下げて農民みたいになっているの。


「貴方様は我らの守り神である羊に主と認めさせたのです」

「いや、意味わからないんだけど」


「メェー!メ―」


「ちょっと静かにしてくれる…って角取って何してんの!」


何故か自分の角を差し出す。
どうやって抜いたのかは解らないけど、何で俺に差し出すんだ。


「大羊が角を差し出すのは己の主と認めた証拠です!これは天が命じているのです」

「いや、誰も命じていませんが」



羊に懐かれただだろ。
もしかしてシャルテルト領の皆さんは単純なのか?



「皆の者、大羊が認められた方だ!これより敬うのだ」


「「「ハハァー!」」」


だから何で年貢を納める農民になってんだよ!
おかしいだろ!


「キーア殿、なんとか…」


「これまでのご無礼をお許しください!」


「アンタもかよ!」


何を言っても無意味だった。
彼等は思い込みが激しく俺の話なんて聞くはずもなかった。


「メェー…」

「なぁ、羊君。これどうするよ」


俺に土下座をする皆さんをどうしろと?
いきなりこんな事されても困るんだけど、誰も助けてくれない。

「レック」


「良かったですねフィルベルト様」


ああ、そうだよな。
お前はそう言う奴だって解っていたさ。


助ける気はないようだ。

こうなったら開き直って行くしかないと思った俺は自棄になった。


しかし、これがきっけかとなり俺はとんでもない事をしでかしてしまった事に気づかないでいた。


国に打撃を与えず静かにひっそり生きながら遠くから手助けをしたい。


そう思っていただけなのに。


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