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第二章新生活
4.屋根裏部屋で暗躍
しおりを挟む王都を出て数か月、生活の基盤を整えながらもリリーは不安を抱いていた。
(あの両親が簡単に諦めるとは思えない…)
通常、婚約破棄の手続きにはある程度の時間がかかる。
あの場から立ち去った後、両親は国王とオルフェウスに何らかのお咎めを受けているとしてもすぐにどうこうなることができない。
王宮で無礼三昧をしたのだから、糾弾されてもすぐに侯爵家から追い出すことはできないのだ。
(姉様を連れ戻しに来るか、あの男が暴走する可能性がある)
リリーは、五年間でリーンハルトの性格を理解した。
自分の史上主義でもある性格は両親とそっくりなのだから、何らかの理由をつけて婚約破棄を破棄するなんて言いそうだった。
何故すオルフェウスに保護してもらわなかったか。
ここにはリリーの復讐もあったのだ。
直ぐにオルフェウスに保護を頼めば、両親とリーンハルトは押しかけて来て、さも、何もなかったかのように振舞う可能性がある。
コーデリアの性格からして、自分を殺す可能性があるし。
万一にでもオルフェウスだけでなく妻のサブリナまでも迷惑をかける事を良しとしないだろう。
なたば、公の場で両親を完全に孤立させる必要がある。
実の娘を勘当し、平民となった娘達は王都から追い出されて行き倒れたと思わせる演出が必要だった。
行方不明の間、二人は社交界か追放された後も思い知ることになるだろう。
これまで侯爵家の力があればこそ、偉そうにふんぞり返っていたのだと。
オルフェウスに対しても傍若無人な態度を取り続けていたのだから。
「一番理想的なのは、あぼヘタレが姉様を口説き落とせればいいんだけど」
「ハードルが高い過ぎるぞ」
「ラスティ―?」
ノックも無しに屋根裏部屋に入って来たのは夫のラスティ―だった。
「また勝手に屋根裏部屋を秘密基地にしたな」
「独り言が多いと怒られるのよね」
「母さんの苦労が目に浮かぶよ?仮面舞踏会の準備はこちらも問題ない…」
協力者でもあり、夫でもあるラスティ―は苦笑した。
以前から突拍子もない事をしでかすのは知っていたが、まさかこんな計画を立てるとは思いもしなかった。
「大胆な行動に出たな…だが、合理的だ」
「何時ハイエナが姉様を攫いに来るか解らないわ。適当な事を言って姉様を連れ戻して一生搾取されなんて許せない。姉様だって幸せになる権利はあるはずよ」
いい加減、自分の幸せを考えて欲しい。
好きな事をして、恋もして、結婚もして。
全てを諦めないでいて欲しいのだ。
「リリーはある意味変わったな」
「え?」
「前よりも逞しくなった…下町にいた時よりもずっと」
リリーは幼い頃から正義感が強かった。
平民で貧しいと言うだけで苛められていた友人がいれば、すぐに倍返しをする程のじゃじゃ馬さも持ち合わせていたが、そんなリリーをラスティ―は好ましく思っていた。
侯爵家に引き取られてからは、住む世界が違うと思っていたが…。
数年後偶然にも再会をして、王都を出た理由を聞いたときは開いた口が塞がらないでいたが、なんともリリーらしいと思ったのだ。
そして幼い頃の恋心は消えることなく強くなり、ラスティ―は何処か危なっかしく向こう見ずなリリーを守りたいと思った。
時折暴走するので誰かが止めに入らなくてはならないので、その役目を自分がしたいと思うようになったのだ。
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