聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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138届かなかった手~サリアside②

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――どうしてあの時。
今更言ってもおかしいかもしれないけど、でもそう思わずいられなかった。



私がもっと優秀だったら。
伯爵令嬢でなかったらお義母様は私を認めたのか。


今になっては後のお祭り。


あの方は、権力に溺れて、ジャネットを聖女にして自分が得られなかった栄華をジャネットにと考えたのかもしれない。


だからこそ私はサーシャには優秀でなくとも情のある娘になって欲しかった。
ジャネットと関わる時間は少なくとも私は手を伸ばしたけれど、でもジャネットは私を見下し、蔑むようになった。


そんな私を救ってくれたのは…


「お母様、どうしたんですか!」


「サーシャ」

「また私の所為でお祖母様に叱られたんですか…ごめんなさい」


「いいえ、違うのよ」


ジャネット程優秀ではない。
それでも優しく愛情深い娘に育ってくれた。

そのうち義両親が病に倒れ看護が必要になったけれど、侍女達も困り果てる程の我儘が酷く。

サーシャが支えてくれた。
ジャネットに一度、見舞いに来て欲しいと頼んだけど拒否され。


私は手を伸ばすの諦めてしまった。
それがいけなかった。






でも!



「ジャネット!すべて悪いのは私です!」

「サリア!」


私は痛む体に鞭を打ちながら立ち上がりジャネットに対峙する。


「すべては私と義母の確執…貴女は被害者だわ」

「今更よ。全部アンタが出来損ないだからいけないのよ!アンタが消えれば…」


「サリア!」


「そうね…」


これが私の責任だというなら甘んじて受けるわ。


でもいうべきことを言わなくてはならない。


「愛していたのよ…貴女の事を」

「何よ今更!アンタの愛なんていらないわ…要らないのよ!」


「サリア!止めるんだ…」

「手出し無用です!来ないでください!」


「お母様!」


私は手で制止をしてカルディもサーシャも近づかないように訴える。



「だけど…貴女は壊れることを選んだのね」

「は?」


私は貴女の手を掴むことはできなかった。


でも貴女は被害者でありながら加害者になった。


「誰もが苦しい思いをして生きている。貴女だけじゃないのよ」

「何を言っているの?」


「誰もがすべてを手に入れることなんてできない」


確かに貴女の運命は捻じ曲げられたかもしれない。

だけど戻ることは何時でもできたはずだわ。

それをしなかったのは何故?


「私だって何度も挫けそうになったわ。道を間違えた…間違ってばかりよ」


でも振り返れば私は一人ではなかった。


だけどジャネット。

貴女は一度だって振り返ろうとしたの?


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