聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります！

104アクシデント

聖女様に祈りを捧げていると噴水の水が溢れてきた。

「えっ？多すぎなんだけど」

手をかざして止めようとするも止まらない。


しかも天井でミシミシ音がする。


「どうしよう水が止まらない…何で？」

水を止めようとしても止め方が解らない。
むしろ水の勢いが酷くなる一方だったのだが。


「サーシャ！」

「フレディー！」

「何をしたんだ！水がいきなりあふれ出したんだが…それを触ったのか」

「どうしましょう！止まらないんです！」

大急ぎで走ってきたのは殿下を背負うフレディーと、マリア様を抱きかかえていた。

反対側からも水が溢れてきている。
何でこんなことになったのか解らない。


「このままだと溺れちゃう！どうしましょう」

「ギャウ！」

「え？上に何が…」

「助かった！抜け道があるぞ」


あそこから逃げられるんじゃないかと思ったのだが。

「既に水の勢いが早くて無理が…」

「あれ？この壁動きますよ」


逃げまどう中、壁に触れた私は動くと思った。

「待て待てサーシャ！だから無暗に触るんじゃ」

「いけませんお嬢様！」


二人に止められそうになるが、壁に手を伸ばすも手の甲を切ってしまい血が流れる。


その瞬間、魔法陣が浮かび上がった。


「これって転移魔法？」

「何でこのタイミングで！」


転移魔法によりその場から私達は移動した。



「うわぁ！」

「何とか助かったが…ここは？」

私達は別の場所に移動したが、ここは先ほどまでいた場所とは違う。



「二人は…一応生きているな」

「本当だ良かった」

既に体力の限界で転移魔法は術者も送られる側も負担があると聞くが、なんとか二人は生きていた。


「何故二人は平気なんだ」

「私は乗り物酔いで…」

そういえば私は転移魔法の後に疲れたとか感じたことはない。


「サーシャ、怪我をしているじゃないか」

「あっ…壁にぶつけた時に手を」

「止血をする。少し我慢してくれ」


そういいながらフレディーは私の手の甲に唇を寄せた。

「あの…くすぐったい」

「止血をするだけだ」

「でも、なんか」

すごくくすぐったいんだけどな。


「何を見せられているんだ」

「何です？独り身の私達に自慢ですか？アピですか…疲れて文句も言えません」

「お二人ともいちゃつくのは後に…」


離れた場所で私達に何か言いたげな表情をしていた皆に気づくことはなかった。


「まったくまた怪我をして」

「善処します…ってまだ止血が」


「そんなに深く切れていいないのだがな」

手の甲からまだ血が落ちる。


その血が、地面に落ちている鍵に落ちてしまった。