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82届かない声~カルディside
しおりを挟むもう声も届かない。
何を言っても無駄だった。
今更悔やんでも仕方ない。
「ジャネット、お前はもう聖女ではない」
「違うわ!私は…」
「女神は彼女を選ばれた。その刻印は堕天使と同じ落胤だ」
ジャネットに刻まれた刻印は天使が堕天使に堕ちたものと同じだ。
過去に聖女候補だった少女が聖女に選ばれずこの刻印を刻まれたことはある。
だが聖女にふさわしくないという理不尽な理由ではない。
聖女候補に選ばれた少女は時が過ぎる中、欲望にまみれ黒い感情に支配された故にだ。
「お前は他人を一度でも愛したことあるか…いや、温かい思いやりに包まれたことがなかったのだな」
「何を言っているの?」
「あの人と同じで」
私の手から奪われた哀れな娘。
聖女となり国を動かせる存在にしたかったのだろう。
権力に執着するあまり利用された。
「違う…」
「私はお前を聖女になんてしたくなかった」
聖女になった以上は重圧と戦い、時には政治に利用される。
私はジャネットが聖女になって幸せになれると思えなかった。
勿論歴代の聖女が不幸とは言わない。
人々の幸福を祈り静かに生きている修道女も多くいる。
だが権力を欲した母。
聖女という地位を利用して頂点に立ちたかったことは知っている。
国の為に、民の為に生きれる人じゃない。
「お前は聖女の器を持っていなかった。なのに聖女候補に選ばれた。皮肉なことにサーシャは聖女に選ばれなかったが後の聖女を見出す手助けをしてしまった」
「どういうこと…」
「お前は何故聖花がマリア殿が咲かせることができたか。聖花の種を何故持っていたか」
女神も酷な事をなさる。
ジャネットには聖女の力を与え、サーシャにはとんでもない物を与えられるとは。
「最初からサーシャは選ばれていた」
「何を言うの!何もないのよ!あの女は…」
「既に妹をそんな風に呼ぶのか」
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最初こそは二人の道はここまで違っていなかったというのに。
「聖女を見出し、導くには巫女の導きが必要」
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だから信憑性はそこまで高くなかったのだが、マリア殿が完全に覚醒した経緯を聞かされた。
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「何を言って…」
「そもそも聖花の種はサーシャの手からマリア殿の手に渡った。それが証だ」
本当に惨い事だ。
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「残念だ。サーシャはお前を好いていたのに」
本当に残念で仕方ない。
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