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68暴走~ジャネットside②

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――憎い。

異世界の女が。


そして私の邪魔を続ける出来損ないのサーシャが。


どうして私の邪魔をするの?


何時も。


何時も!


『ジャネット、貴女は選ばれたのです』

『完璧でいなさい』

物心つく前から私に完璧であるように告げたお祖母様とお祖父様。

『お祖父様、サーシャは?』

『あれは貴女と違うのです。近づくのではありません』

『あの出来の悪い嫁の血をこれでもかと受け継ぐとは』


怖い目で見ていた二人。
どうし手二人はそんな目をしているのかと思っていた。


幼いころは解らない。
何時も二人はイライラして。

『本当に価値のない子ね』

『カルディも愚かな真似を』


貴族社会では政略結婚が常識。
なのにお父様は政略結婚をしなかった。

伯爵令嬢であるお母様は決して身分が固くない。
かといって魔力が特別に優れているわけではないので利益がなかった。


貴族夫人としても問題が多く、自分と同じ身分や辺境伯爵夫人などと親しくなりお祖母様を怒らせていた。


『まったく本当に、何も解ってないわ!』

『お母様は自覚がないのね』

お祖母様がイライラが続く中私は本気で思ったわけじゃない。
ただ、お祖母様に賛同する言葉を言うと。

『やはりジャネットは聡明ね。さすが私の孫だわ』

眉を吊り上げていた表情が柔らかくなり、お祖母様の言葉に賛同するようになった。


お母様の悪口を言った意識はない。

だってお祖母様を困らせるのが悪いのだから。

だから私がしっかりしないと。


そう思って社交界でも完璧にふるまった。


なのに。


「聞いたぞジャネット。またお前は夜会で他の令嬢のドレスを咎めたのか。彼女は喪に服していたんだぞ」

「そうでなくとも言っていいことと悪いことがあるのに…なんてことを」


二人は私を責めるだけで褒めてくれない。

「喪に服しているなんて知らなかったんです。それにそんな時期に来る等非常識だわ」


「お前は、自分の非を認めず相手を責めることしかできないのか」


「正しいことをしたのは私です!」

間違ってないのに何で私が悪いの。
それに高位貴族たるもの簡単に自分の言葉を覆すなんて。

「お母様は貴族夫人として自覚がないのですわ。お父様が箱庭で甘やかすからこんな非常識に」

「ジャネット!」

「止めてください貴方!」

お父様が怒鳴り私の腕を掴むもお母様は泣きそうな表情で止める。

そのやり取りは私にとって不愉快でしかない。
弱い母を守る父。


なんて愚かなの。


私はこんな女性になりたくない。
夫に守ってもらうしかできない弱い女性には。


「お父様?お母様…どうしたの?」


「サーシャ」

「どうして泣いているの?お母様…」


「いいえ、なんでもないのよサーシャ」


私には絶対にそんな優しい目は見せない。
それが許せなかった。

別に母の愛が欲しいわけじゃない。

ただ不快だっただけだ。
自分と似ている娘を抱きしめ傷のなめ合いをする愚かな二人を。

こんな人になるものか。
そう強く思った私は実の母を心の底から嫌悪した。

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